演者手作り 5月13日お披露目
和歌浦一帯で5月13日(日)に開かれる紀州東照宮の例祭、和歌祭。鬼の面をかぶり、棒を振る演目「雑賀踊」では、傷んだ面の代わりとなる新しい面作りに演者が約10年前から取り組んでいる。今年、全ての面がそろい、先頭を進む金色の面もお披露目。製作した寺本雅哉さん(55)は「作り手の顔に似るのか、最初はほっそりとした仕上がりになりましたが、何枚も作るうちに鬼らしい表情が出てきました。迫力ある面を見てほしい」と張り切っている。
雑賀踊は、織田信長軍を破った雑賀孫市が戦勝を祝い舞った踊りがルーツと言われ、地元の子どもたちが刀に見立てた竹の棒を使う笹羅踊と、鬼の面をつけ、攻撃と防御を表す「忠棒・請棒」で構成される。忠棒・請棒は8人ずつで、面の色がはげ、割れてきたため、メンバー有志が、和歌山市の能面師、久保博山さん(78)に指導を受けて自作してきた。
全員、面打ちの素人だったが、月に1、2回、久保さんが作った手本を頼りに、木づち、ノミ、彫刻刀でヒノキの角材から彫り出し、色を塗って仕上げた。完成次第、新しい面への入れ替えを進め、今年、全員分がそろった。
毎年1枚ずつ完成させてきた金井修治さん(50)は「できあがるごとに『もっとこうすれば良かった』と意欲が湧いてきました」、川西孝秀さん(39)は「自分たちで作り、新しい伝統を引き継げてうれしい」と喜ぶ。
列の先頭に立つ、金色の鬼面は寺本さんが担当。鼻を大きく、あごを前に突き出して前のめりな表情に仕上げた。寺本さんは「開いた口の空洞を彫るのが難しかったですが、5枚ほど作ってきた中で一番の出来」。久保さんは「自分たちで打つんだという意気込みがすごく、数をこなすうちに個性ある、しっかりした面を打てるようになりました。演者が面を打てば完成までの大変さが分かるので、長く大切に使ってくれるはず」と目を細めている。
(ニュース和歌山/2018年5月12日更新)