紀美野町 移住男性が古民家で私設館
生石山の中腹にたたずむ紀美野町梅本の古民家に、昭和の木製ラジオとレトロな蓄音器が並ぶ「生石ラジオ館」がある。大阪から移住した北村富郎さん(66)がコレクションを公開している。「ラジオは画期的な通信手段として誕生し、テレビが登場するまで30年、戦前戦後の激動の時代を人々と共に生きてきました」と話している。
和歌浦出身で、星林高校時代にアマチュア無線を始めた北村さん。大阪と東京で会社勤めし、定年退職した2012年、夫婦で紀美野町に移り住んだ。築100年を超える古民家で、縁側に腰をかけると眼前に新緑が広がり、鳥のさえずりと小川のせせらぎが聞こえてくる。
定年を迎える前、自分が生まれたころに製造されたラジオを修理したのがきっかけで収集に火がついた。「こんな古いものでも、まだ元気で鳴るんだと勇気をもらえた。『もっと古いものはどんなのだろう』と直すのが楽しく、多い時は月3台直していました」
14年から、母屋の一室を「ラジオ館」と名付け、ハイキング客が多い4月〜11月の土日に公開するように。100台以上あるコレクションのうち、20台を展示する。半分は、つまみを回せば現在の放送がノイズ混じりに流れる。
日本でラジオ放送が始まった1925年(大正14年)から55年(昭和30年)ごろまでの国産ラジオが中心。昭和天皇自身が玉音放送を聴いたとされるラジオと同型のアメリカ製や、ナチスが宣伝活動に使ったドイツの国民ラジオなど、時代を映すものもあり、北村さんが一つずつ解説と資料を添えている。
当初はネットオークションで集めていたが、「うちにもあるで」と寄贈も増えた。「『父親が若いころ、こういう音で聴いていたんだな』と想像でき、骨とう品というより親しみが感じられる。昔を懐かしんだり、若い人に知ってもらえたりするよう残していきたい」と目を細める。
無料。来館は要予約。北村さん(oishi_radio@yahoo.co.jp)。
写真=昭和の木製ラジオや蓄音機が並ぶ
(ニュース和歌山/2018年5月23日更新)