2021年完成目指す
日本で多い姓の一つ、「鈴木」の発祥地で、海南市藤白の藤白神社内にある鈴木屋敷。老朽化が進んでいるが、復元に向けた一歩を踏み出した。6月1日に第1回の整備基本計画策定委員会と7月に始まる解体工事の安全祈願祭が開かれた。藤白神社総代長の平岡溥己(ひろみ)さんは「完成予定は3年後。埋もれていた歴史文化に光を当てられる」と意気込みを見せる。
熊野詣でが盛んになった平安時代末期。熊野の鈴木氏が藤白に移り住み、熊野三山への案内役を務めたほか、全国へ熊野信仰を普及させ、3300余りの熊野神社を建立した。その拠点が鈴木屋敷で、現在、全国に200万人といわれる〝鈴木さん〟のルーツとされる。
今の建物は江戸時代後期に造られたと見られるが、藤白鈴木家122代当主が亡くなった1942年以降、空き家状態に。近年は大雨や台風の影響で崩壊寸前となり、現在は、壁や屋根がブルーシートで覆われ、パイプとネットで囲われている。
復元についてはこれまでも何度か話は上がったが、実現に至らず。今回は「全国鈴木サミット」が海南市で開かれた2013年に鈴木屋敷を育てる会が結成され、15年に屋敷を含む藤白神社境内などが国の史跡に指定されたことが後押しした。
今後、建物を解体し、柱や瓦などで使えるものは再活用。具体的な整備内容は今後の委員会で詰めていくが、江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』に描かれている形にしたい考えだ。必要とされる約1億3000万円のうち、約半分は国、県、市からの補助で、残りは全国の鈴木さんや地元住民らに寄付を呼びかける。
平岡さんは「鈴木の歴史を展示できる施設に。漆器など地場産業とコラボして全国に発信し、まちおこしにつなげたい」と話している。
寄付の詳細は事務局(073・482・1123、月水金のみ)。
写真=解体工事安全祈願祭で
(ニュース和歌山/2018年6月9日更新)