本堂に〝天狗の手形〟と伝わる跡が残る海南市下津町橘本の福勝寺。8月9日(木)の千日参りで、この伝承にちなみ、天狗のうちわを模した火の輪くぐりを設置する。浦弘晴住職と地域住民の手作りで、浦住職は「他地区からの参拝客に伝説を知ってもらう機会になれば。側に滝が流れる夜の本堂は厳かな雰囲気が味わえます」と話している。
下津の福勝寺 千日参りに火の輪くぐり
福勝寺は橘本王子の西北、熊野古道に近く、山の中腹にある。国の重要文化財に指定されている本堂の縁側には、悪さをしないようにと観音様に告げられた際、天狗が謝った時についたとされる手形が残る。
千日参りは「一日の参詣で千日分の功徳がある」と言われ、かつては出店が並び、多くの参拝客でにぎわった。住民の減少や専属の住職がいない時期が長くなる中、次第に縮小。30年前からは本堂へ続く石の階段に祈願を書いたろうそくを並べ、ライトアップしている。
今回、無病息災を願ってくぐる茅の輪を新たに設置しようと浦住職が地元の中西恒雄さんに相談したところ、「伝承にちなんだものにしては」と声が上がった。中西さんは早速、うちわに見立てた直径2㍍の鉄輪を製作。〝火の輪〟になるよう、等間隔にキャンドルホルダーを付けた。
和歌山市の鈴木正史さんも手伝い、天狗の持つヤツデの形をイメージし、境内に生い茂るソテツの葉を輪の周りにつけようと思案中だ。
橘本地区で生まれ育った中西さんは「子どものころ、千日参りが大変にぎわった光景を覚えています。輪くぐりで子どもたちにも喜んでもらいたい」と意気込んでいる。
当日午後6時半から本堂で祈願。同寺(073・494・0312)。
写真=うちわをイメージした鉄の周囲に、当日はろうそくを並べて火の輪をつくる(左から鈴木さん、浦住職、中西さん)
(ニュース和歌山/2018年8月4日更新)