海南市を訪れる人に気持ちよく散策してもらおうと、同市観光協会が「Art de─絆の道しるべ」と題したイベントを8月26日(日)に実施。熊野街道沿いに提灯を取り付け、漫画家のマエオカテツヤさんと空き店舗のシャッターに絵を描くボランティアを募る。企画した同協会理事の古田充司さんは「案内表示や道しるべを充実させ、おもてなしの気持ちを育む取り組みの第一弾に」と力を込める。

熊野街道に提灯、空き店に絵〜8月26日 ボランティア募り活動

 古田さんは6月、広島県尾道市を視察した際、多言語の表記がある観光案内板が多いことに刺激を受けた。「商店街でも店先に観光スポットやイベントの情報をまとめたチラシを設置しているミニ観光案内所のようなところがたくさんあり、情報発信が抜群でした」。これを参考に、海南市でも観光客を迎えるおもてなし体制を強化したいと考えたのが今回の取り組みだ。

 活動場所に選んだのは、JR海南駅の北、日方地区を通る熊野街道沿い。熊野街道は和歌山城下から熊野へ詣るための道で、江戸時代には紀南へ向かう商人らがよく通った。地区内には、和歌山城下から2里(約8㌔)にあたるところに一里塚が今も立ち、古い道しるべが2つある。道沿いには、紀州徳川家ゆかりで、門に葵の紋が残る永正寺もある。当日はこの道沿いの住宅などに提灯約30個を取り付ける。

 地区内の街道沿いには栄通り商店街がある。かつてはにぎわいを見せたものの、近年は閉じた店が多い。目立つシャッターをキャンバスに、ニュース和歌山で「妖怪大図鑑」を連載する和歌山市の漫画家、マエオカさんが、ボランティアと一緒に絵を描く。マエオカさんは「実際に歩いてみると、古い建物が多く、昭和のレトロ感が残っている。妖怪を描こうかと考えていますが、シャッター数枚を使ってコマ漫画にするのも面白いかもしれない」と当日に向けてアイデアを練る。

 観光客を案内する語り部でつくる海南市語り部の会は、市内を3〜4エリアに分け、寺社数ヵ所を歩いて2〜3時間で回れるルートづくりを構想中。柴田雄蔵会長は「例えば黒江駅をスタートし、黒江の中言神社や浄国寺を見て、熊野街道を通って永正寺、栄通り東の伊勢部柿本神社を回り、海南駅まで歩くコースも考えられる。熊野街道沿いに提灯が掛けられ、また〝漫画の道〟となれば一つの話題になる」と歓迎。「今回のような取り組みを1回で終わらせるのではなく、気長に続け積み重ねていくことが大事」とエールを贈る。

 熊野聖域への入口となる藤白神社、漆器の産地、黒江、菓子の神様をまつる橘本神社はじめ、海南市に観光スポットは豊富だ。「国宝に指定されている県内の建築物7ヵ所中、4ヵ所が海南ですし、鈴木姓のルーツ、鈴木屋敷が復元中です。紀州海南ひなめぐりや黒江めったまつりなど、市民手づくりのイベントも多い」と胸を張る古田さん。「これらを点ではなく、線で結んでいく取り組みが必要。今回のイベントはその始まりにしたい。老若男女に参加してもらい、まちづくりに携わる人と人との絆をつくるきっかけにもなれば」と張り切っている。

 「Art de─絆の道しるべ」は午前9時、同市日方の伊勢部柿本神社集合。柴田会長から熊野街道についての講話を聞いた後、提灯取り付けとシャッターイラスト描きに分かれて作業に当たる。無料。申し込み不要。雨天中止。同協会(073・483・8461)。

写真=江戸時代の道しるべが今も残る街道。この道沿いに提灯を取り付ける

(ニュース和歌山/2018年8月18日更新)