電車を降りて突然の雨に見舞われたら、この傘をどうぞ──。近隣に高校が多く、1日約3600人が利用するJR六十谷駅で、有功地区の住民でつくるNPO法人「ほっとタウン有功」の会員が、だれでも使える傘を置く〝善意の傘〟活動に励んでいる。

ほっとタウン有功が活動

 ほっとタウン有功は高齢者の地域福祉に取り組み、11ヵ所でサロンを開く。善意の傘は、六十谷の事務所で月曜午前に開くおしゃべり会のメンバーで、70、80代の15人が昨年秋に始めた。発案したのは、奈良から移り住んだ岸田行弘さん、節子さん夫妻。JR三郷駅で同様の活動がされていたのを思い出し、サロンで相談したのが始まりだ。

 メンバーで協力し、昨年10月から地域内の学校や知人に不要な傘の提供を呼びかけ、これまで約450本以上を集めた。みんなで故障がないか点検し、マジックで「要返却」と記入。改札横に、日曜大工が得意な河野朝夫さん力作の傘立てとともに設置した。河野さんは「大切に使ってくれているでしょうが、中には〝ケガをした状態〟で戻ってくるものも。処分する際も最後まで面倒を見ます」とほほ笑む。

 六十谷駅は市立和歌山高校、開智高校、近畿大学附属和歌山高校が近い。管理する紀伊駅の藪井謙治駅長は「きちんと傘が戻ってきているようです。一般の方、学生さん共に利用され喜ばれています」。同NPOの宮本佳子副理事長は「サロンの参加者から『やりたい』と声が出てきたのがうれしい。こうした活動は生きがいにもつながるはず」と期待している。

写真=メンバーが集めた傘を1本ずつ点検

(ニュース和歌山/2018年8月18日更新)