30年以上にわたり、幼稚園や保育所などに出向いて人形劇を披露する海南市の「亀川人形劇サークル はちの巣」。認知症をテーマにしたオリジナルの「飴(あめ)あげる」を作り、8月末に小学生の前で初披露した。メンバーの湯川美代子さんは「認知症についてよく知らない大人も少なくない。これからを担う子どもたちに正しく認識してもらい、その子どもたちから大人へと知識が広まるきっかけに」と願いを込める。

亀川人形劇サークル はちの巣〜脚本自作 小学校で初披露

 飴が入った袋を持って毎日散歩に出かけ、すれ違う人に飴を配って回るおばあちゃん。「飴あげる。おいしいよ」「ありがとう、昨日ももらったよ(あの人にもあげてる。大丈夫かな)」。知らないうちに遠くまで来てしまったおばあちゃんだが、道行く女性が飴の袋に住所と名前を見つけ──。

 1985年発足のはちの巣は、子どもたちに「大きなかぶ」「さるかに合戦」など昔話を披露してきた。現在、60、70代の女性8人が所属する。

 認知症をテーマにした人形劇は、介護支援専門員で、2年前に入った湯川さんの発案。「職業柄、認知症の人に家族がつらくあたるところを目にすることも。〝認知症は脳の病気〟と正しい知識を地域に広げる一助として、子どものうちに知ってもらえるように」と提案した。メンバーで脚本を考え、登場する人形を手作り。作成に当たっては、認知症サポーター養成講座をまだ受けていなかった5人も受講した。昨年から公民館が主催する一般対象のいきがいづくり教室や高齢者介護施設で発表してきた。

 8月31日には、海南市且来の亀川小学校6年生を対象に開かれた認知症サポーター養成講座の中で、小学生を前に初めて上演した。鑑賞した相谷幸太郎くんは「おばあちゃんを見かけた人がやさしく接してあげていた。認知症の人にも、そうでない人にもやさしくしようと思います」、池田日茉里(ひまり)さんも「忘れたくないことも忘れてしまうのが認知症。隣で支えてあげることが大切だと感じました」と理解した様子。A組担任の谷奥知子教諭は「セリフが和歌山弁だったため、子どもたちは認知症をより身近なことに感じたのでは」と話す。

 はちの巣の角田みどり会長は「高齢化が進み、おじいちゃん、おばあちゃんは今後ますます増えてくる。小中学生から知ってもらい、地域で支えていかなければならないという気持ちを育んでゆけたら」とほほ笑む。また、湯川さんが勤める和歌山ケアマネージャーの会理事長で、活動を応援する市原正登さんは「介護業界で人材が不足している中で、子どもたちが介護の仕事に関心を持つきっかけにもなれば」と期待を寄せている。

写真上=「飴あげる」のワンシーン、同下=手作りの人形を手にする団員たち

(ニュース和歌山/2018年9月15日更新)