那賀地域で「紀州富士」と讃えられる龍門山と紀の川を表現した壁画が11月2日、岩出市清水の茜カフェにお目見えした。手掛けた同市の画家、高嶋宏至さんは「紀州富士を望む方角の塀に景色を描きました。見た人が地元の風景に興味を持ち、魅力を再発見する機会になれば」と望む。

 大学で美術を学び、グラフィックデザインの仕事に携わる高嶋さん。6年前に大阪から岩出市へ移住し、カフェ奥に設けた事務所で、デザインの仕事をするかたわら、絵画教室を主宰する。

 カフェをよく訪れる隣家の男性から、店の庭から見える自宅の塀を見て、「寂しいので銭湯の富士山のような絵を描いてほしい」と依頼を受けた。題材に選んだのが龍門山。江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』に「その形あたかも富嶽に似たり」と記され、今も地元の人に愛されている。

 カフェオーナー、上西啓子さんの了解を得て、5ヵ月で2×7㍍の作品を仕上げた。日本の伝統色である浅葱(あさぎ)色や常磐色などを使い、紀の川の流れと、龍門山、大台ヶ原、最初が峰、御茶屋御殿山、手前には和歌山平野を描いた。「庭の松も屋根の瓦も絵の一部。うまく調和しました」と自信を見せる。

 上西さんは「お客さまから『この絵はどこ?』と聞かれることが多い。絵の完成を多くの人が待ちわびていたのでうれしい」と喜んでいる。

写真=店の庭に壁画を完成させた高嶋さん

(ニュース和歌山/2018年11月10日更新)