60歳以上を中心にスポーツや文化活動で交流する全国健康福祉祭「ねんりんピック」が11月9日(土)〜12日(火)、和歌山県内で初開催されます。全国1万人が集まる大会。出場に向け、奮闘する3人を紹介します。
80歳で迎える晴れ舞台〜パークゴルフ 小久保美智子さん(79)
パークゴルフは生きがい。練習に来られることが健康のバロメーターになっています──。空と芝生と澄み切った空気。会場となる紀美野町のかみふれあい公園パークゴルフ場で、さわやかな表情を見せる。昨年11月の県予選で女子1位となり、今年の出場を決めた。
1本のクラブで競うパークゴルフ。15年前、友人に誘われ大会に参加し、自然の中でプレーする心地良さに魅了された。地元のほか、富山や高知など県外へも一人で車を走らせ、練習を重ねてきた。背筋を伸ばし、芝の状態を読み、まっすぐクラブを振る。15年でつかんだのは、「あせらず、我慢強く」。スコアを気にしすぎず、自分を信じて臨む。
ねんりんピックは2009年、13年に出場した。地元での出場が決まった瞬間、これまでとは別格の感情がわき出た。「辛い時期もあったけれど、続けてきて心底良かった。体調管理を徹底して練習に励むのみ」と気合いを見せる。
昨年10月には指導員資格を更新した。「女性や子ども、お年寄り、だれもが気軽にできるパークゴルフの楽しさを広められれば」。80歳で迎える晴れ舞台、その先に夢は続く。
喜怒哀楽詠み続け〜俳句 桑島啓司さん(77)
初鴨に 湖広すぎる 青すぎる─。富山県の宇奈月ダムで風景を詠んだ作品が、昨年の富山大会で、当日句730句から最上位の大会会長特賞を受賞した。
俳句は10代からたしなむ。就職で徳島から和歌山に移り住み、職場の俳句サークルに所属し、22歳で俳人の故・山口誓子に入門。その後、俳人、鷹羽狩行の俳誌『狩』に参加した。「昔は貧しく、遊ぶものがなかったので、俳句に没頭した。人生の喜怒哀楽を俳句から学び、支えられてきました」
職場近くに海があり、風景を眺めて思いを句にしてきた。「仕事で体を鍛えられ、俳句で心を鍛えました」と振り返る。
ねんりんピックの俳句会場は有田川町金屋のみかん畑で、みかん狩りをしながら、情景や体験を詠む。「この大会は流派を越えて全国の人が集う。互いの感性を磨きあうチャンス」。まだまだ熱は冷めない。
写真=手帳を持ち歩き、思いを書き留める
選手として再び〜弓道 生駒佳典さん(70)
弓を引く姿を孫に見てもらいたくて、また始めました──。笑顔で話す姿から一変、弓矢を持ち、射法八節と呼ばれる所作に入ると、表情がキリリと引き締まった。発射のタイミングが熟すのを待つ六節目の「会」を終えると、鋭い視線で28㍍先にある直径36㌢の的へ矢を放つ。
新宮高校入学を機に弓道を始め、インターハイで6位に入賞した。27歳で指導者資格を取り、それから30年以上、国体県代表監督を務め、1989年の北海道国体で2位に導いた。
選手に復帰したのは6年前。孫の誕生がきっかけだ。体は昔のようには動かないが、「魅力は無心になれること。的に当たらなくても、鋭い矢が出たら快感です」と、年を重ねてから感じる競技の奥深さにひかれる。
「弓道は生涯スポーツ。80歳を超える人が弓を引く姿に刺激をもらいます。大会に向けて、まだまだ修練を積みたい」
(ニュース和歌山/2019年1月1日更新)