昨年9月の台風21号で甚大な被害を受けた紀の川市荒見にあるマルヰ柑橘の井関結加さんが12月19日、「負けない! !ポン酢・虹色」を発売した(写真)。台風で傷付いた柑橘7種に地元の酢やカツオ節などこだわりの材料を合わせた。「災害に遭っても命があれば何とかなる。今、何かで悩んでいる人に勇気を贈れるポン酢になれば」と笑顔を見せる。

マルヰ柑橘 井関結加さん開発

 県の農産物などに46億3800万円の被害をもたらした台風21号。龍門山の山裾で家族経営する井関さんの農園も容赦なく襲われた。桃の木は根元から裂け、収穫前のレモンや柿は落果。新設したばかりのキウイをつるした棚はぐにゃりと曲がり、崩れ落ちた。変わり果てた畑に、ただ言葉を失った。

 新たに苗木を植えても、以前のように収穫できるまで10年かかる。多くの近隣農家が「後継ぎがなく、苗木を植える気力がない。もう終わりや」と肩を落とした。

 10月、井関さんは「立ち止まっていられない。農家の希望になる物を」と奮起。友人の協力でレモンやはっさく、デコポンなど傷付いた柑橘7種をしぼり、〝虹色〟のポン酢に生まれ変わらせた。その他の材料も地元にこだわり、同市の醸造元、九重雜賀の木おけで発酵した酢、和歌山市のカツオ節製造業、カネシゲの熟成されたカツオ節を使っている。

 取り組みを知った知人から、「心より応援しています」「新しい苗木の資金になれば」と声が寄せられ、すでに300本を届けた。「みんなの真心でできたポン酢です」と井関さん。「いつか畑を復活させ、自然にふれる農業の良さを伝える場をつくります。応援してくれた人に恩返しがしたい」。災害の痛みを、夢に向かう強さへ変える。

 360㍉、600円。和歌山市木ノ本のアターブルほかで販売。マルヰ柑橘(0736・73・3835)。

写真=「果汁の味あふれるポン酢です」と井関さん

(ニュース和歌山/2019年1月19日更新)