調理師資格を生かし、自宅で子ども向け料理教室を開く和歌山市宇須の柴友加里さん(48)が今月、活動を本格的に始めた。「安全に失敗する」をモットーに料理を楽しみ、食の大切さを伝えるためで、これまでの月2回から10回に増やし、未就学児も受け入れる。「自分で料理を作ると、砂糖や塩がどのくらい入っているか分かり、健康への意識が高まる。食べておいしい、人に食べてもらってうれしいという喜びを感じてほしい」と望む。
和歌山市の柴友加里さん 「安全に失敗」 自宅で実践
今年1回目の12日、小学2~4年の5人が集まった。柴さんから手順を教わり、2人1組でプリンとスノーボールクッキー作りに挑戦。材料を量る道具が分からなかったり、容器へ移す際にこぼしたりしても、柴さんはなるべく口を出さない。「保護者は原則同席しません。どうしても口や手が出ちゃうし、子どもも頼ってしまうので」。子どもだけで完成させると、喜びは大きくなると知っているからだ。
教室を始めたのは4年前。今の家に引っ越して来て1年後だった。当時小3だった娘の結美さんが学校や地域になじめるようにと、近所の子どもたちに声をかけた。
当初2人だった教室は、友達同士誘って5人ほど集まるように。一緒に料理を作ることで仲が深まり、自分で作ると子どもたちは「苦手」と言っていた野菜を口にできた。1年前から参加する田村拓海くん(4年)は「嫌いだったなすびも自分で料理すると食べられる。家でなすの揚げ浸しを作ります」とにっこり。
子どもたちの変化が興味深く、昨年からチラシを配って参加を呼びかける。「鯖水煮缶の炊きこみご飯」「牛乳わらびもち」など、身近な食材で手軽に作れる、一工夫加えたレシピを編み出し、イラストを描いたレシピを持ち帰ってもらう。卵を混ぜる時は空き瓶に入れて振り、クッキーの型は牛乳パックで作るなど、調理器具以外を取り入れて遊び心を誘う。
料理の楽しさを知った子どもたちは、自宅で台所に立つように。娘の碧さん(小3)を通わせる海南市の中村麻希さん(40)は「体調不良の時、玉子焼きをすすんで作ってくれました。あまり手伝いをお願いしなかったので、本当にうれしかった」と喜ぶ。拓海くんの母、恵理さん(48)は「積極的に料理をするようになり、初めは不安でしたが、今は安心して見られ、頼もしい」と目を細める。
今月から5歳以上の未就学児向けの教室も始め、中学生になった結美さんも手伝う。友加里さんは「一生付き合っていく身体をつくる成長期に、自分の手で料理を作り、食に関心を持つことは大切。身も心も元気になる教室にしたい」。
紀の川市食育推進会議の三國和美会長(62)は「設備がそろった学校や施設での教室に比べ、実際に家庭にある物を使って学べるのが良い。朝起きて一つでも手伝いをすれば、朝ご飯がおいしくなり、早起きにもつながる。こうした取り組みが広がれば」と見守る。
柴さん(shibacchi1101@gmail.com)。
写真=子どもたちに料理を教える柴さん(左から2人目)
(ニュース和歌山/2019年1月19日更新)