明治時代に絶滅したニホンオオカミがいる森へタイムスリップしたような体験ができるVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)の開発に、和歌山大学大学院2年の板倉七海さんと、和大4年の北中浩之さんが取り組んでいる。和大所有のはく製を元に手掛けた映像で、1月30、31日に海南市船尾の和歌山県立自然博物館で試験的に初公開した。板倉さんは「世界で4体だけの貴重なはく製のうちの一体を、和大が所有していることを広めたい」と力を込める。

和大学生 はく製調べ映像化

 ゴーグルを着けると、そこは360度森の中。木々のざわめきが聞こえ、見上げれば満天の星がまたたく。草をかき分け、前へ進もうとすると突然、目の前をニホンオオカミが駆け抜けた…。

 コンピュータでつくられた仮想の世界を、ゴーグル型の端末を着けて疑似体験するVR。和大所有のはく製は同館で保管されている。劣化を防ぐため年に1ヵ月だけの公開だが、普段からより身近に感じてもらう機会をと2人がVRを考えた。

 システム工学を学ぶ2人は、デザインを数値で捉えるのが専門。はく製の頭部が和大に残る頭骨より膨張した形に見えることに着目し、この頭骨と国立科学博物館の全身骨格を読み取り、本来の姿を推測した。動きは今も生存するタイリクオオカミを参考に編集。4年がかりで研究する板倉さんは「絶滅した生き物で、本来の姿が分からず苦労した。説得力ある展示にするため、生態や解剖学も勉強しました」。映像では、開発の経緯や研究成果も紹介している。

 同館で体験した人からは「生きているようで分かりやすい」「立体的な動画で臨場感を味わえた」と好評だった。北中さんは「実演を繰り返し、完成度を高めます」。板倉さんは「科学的根拠をより確かにして、いつか全国の博物館で出張展示できれば」と描いている。

写真=動画を作製した板倉さん(左)と北中さん

(ニュース和歌山/2019年2月9日更新)