数百年前から紀美野町に生息する樹木、ヒダリマキガヤ群(13本)が2月7日、和歌山県の天然記念物に指定された。高野山と深いかかわりがある同町の歴史を今に伝える貴重な木だが、枯死の危機に直面している。調査した同町まちづくり推進協議会紀美野史発見部会の西浦史雄さん(写真)は「地元での理解を深め、生きていける環境を整えたい」と語る。
紀美野の歴史伝える樹木〜和歌山県天然記念物に指定
生長スピードが遅く、目が詰まっているため、幹は最上級の囲碁、将棋盤、種子から取れる油は食用に使われるカヤ。ヒダリマキガヤはその一品種で、左巻きの模様が入った大きい種子をもつのが特徴だ。
江戸時代の『紀伊続風土記』に、カヤの油は冬の高野山でも凍らず、灯明用や食用として珍重されたとの記述があり、高野山領だった同町長谷毛原、国吉地域で、より多くの油が取れるヒダリマキガヤが植えられてきたと考えられる。
同部会が町の歴史を調べる中、珍しいカヤがあると知り、2015年に町教委と調査を開始。高齢者に聞き込みを重ね、約190本のカヤを確認した。各木の種子を調査したところ、ヒダリマキガヤだと思われる木が45本あり、うち25本がヒダリマキガヤと断定できた。中には、幹周り5㍍の推定樹齢500年以上の巨木も見つかった。
ただ、ほとんどが整備されていない竹や杉、ひのきに覆われて弱っており、既に枯死した木もあった。町教委の東中啓吉さんは「このまま放置すれば枯れてしまう。何百年もかけて守られてきた、他に真似できない地域の宝。価値を認識してほしい」と願う。
今回、指定されたのは所有者の許可が得られた13本だが、今後も調査を続ける。西浦さんは「守る会をつくり、組織で保存したい。観光資源としても生かしていければ」と描いている。
(ニュース和歌山/2019年2月27日更新)