恵運寺(和歌山市吹上)の紀州忍術資料館(写真)が忍術ファンの間で話題だ。同寺に墓がある、日本三大忍術書のひとつ『正忍記』を記した紀州藩士で軍学者の名取三十郎を通じて、紀州と忍術のゆかりを発信するのが目的で、2月のオープン以来、国内外から1000人を超える人が訪れている。
恵運寺 資料館が話題
名取三十郎は、紀州藩初代藩主の徳川頼宣に軍事指南役として仕え、多数の軍学書を残した。うち『正忍記』は伊賀、甲賀のものと並ぶ日本三大忍術書のひとつに数えられ、精神論やスパイ活動の奥義を伝える。2012年、同寺に三十郎の墓があることが英国人研究者からの問い合わせで判明。以来、同寺は「正忍記を読む会」を発足させ、2月22日の忍者の日に合わせ「忍活御朱印」を押すなど紀州忍術をアピールしている。
最近は海外から訪れる忍者ファンが増え、分かりやすい形で紀州と忍術のかかわりに触れてもらおうと資料館を作った。パネル展示がメーンで、「名取三十郎と名取流」「日本三大忍術書」「紀州忍術の極意」などを図入りで解説。スマートフォンを活用すれば6ヵ国語で読め、手裏剣と仏教の関係といった忍術の意外な面が知れる。木塀を破る道具「築地破り」、再現した名取流の手裏剣を並べ、近く、紀州徳川家入城400年を記念し、名取家と頼宣ゆかりの史料も展示したい考えだ。
また、寺の前に本紙発行『城下町の風景』掲載の絵図「寺町」「車坂稲荷社」(芝田浩子さん彩色)をあしらった観光案内板も設置した。山本寿法住職は「寺町や紀州忍術について知ってもらい、和歌山城南側の観光拠点になりたい」と話す。
原則午前9時〜午後5時。同寺(073・424・7633)。
(ニュース和歌山/2019年5月22日更新)