社経研が調査 太洋工業は待遇改善
少子高齢化と人手不足の中、企業の高齢者雇用について、和歌山社会経済研究所が調べた。60歳以上の高齢従業員がいる事業所は7割に上り、その9割が「貢献している」との回答で、シニア世代の活躍と、事業者が寄せる期待の高さが見えた。同研究所は「高齢従業員の豊富な経験が事業活動に大きな成果をもたらしている一方、取り組みをしていない事業者も多く、国の支援施策の認知度や活用度も低い。働きやすさのさらなる向上が重要になる」と見ている。
同研究所のアンケートに県内約600社が回答。定年を設定している企業は6割で、このうち6割が60歳、3割が65歳だった。貢献内容は、「豊富な経験」が73%、「人手不足の解消」が61%。
雇用に関する課題について、「健康・安全面での不安」が51%、「体力・能力面での業務内容の制約」が44%、「新たな技術・知識への対応力が低い」が28%。一方で働きやすさ向上への取り組みは、「なし」が41%、「勤務条件の多様化」が34%、「健康・安全面への配慮」が27%だった。9割が高齢従業員への期待を寄せながらも、取り組みの遅れが目立った。
そんな中、和歌山市有本の太洋工業は4月、60歳で定年を迎えた従業員の再雇用時の待遇を改善した。間もなく定年を迎える世代が多く、技術や経験のある人材が抜けると事業への影響が懸念されるためで、定年後の再雇用時に60歳時点から25~40%カットしていた給与を5~10%減に抑えることに。これまでの再雇用者も同水準にした。
再雇用4年目、製造課の清家久司さん(64)は「将来を考えると、少しでも給与が高ければ不安は和らぐ。こうした改善はありがたい」と笑顔。
同社は「新たな機器の開発には才能だけでなく、長年の蓄積が重要。将来を担う人材育成にも力を発揮してもらいたい」と期待を寄せ、「年金支給年齢の引き上げ議論が高まる中、65歳定年制の本格導入を見据え、取り組みをさらに進めます」としている。
写真=いきいき働く太洋工業の清家さん
(ニュース和歌山/2019年6月8日更新)