「ファスナーやボタンが苦手」「1人で着替えられない」「同じ服を着たがる」──。発達障害児が抱える服の悩みに寄り添おうと、和歌山市の前田香さんが、手作り服の販売や着方をアドバイスするコンシェルジュ活動「fukufuku312」を始めた。「服と支援を工夫し、親子の負担を減らすお手伝いをしたい」と意気込んでいる。
和歌山市の前田香さん 手作り服やHPで支援
最重度の発達障害を抱える小4の長男を育てる前田さん。息子は2歳ごろから素材や凹凸などを理由に、着たがらない服が出始めた。試着が難しく、探し回って買った服がお蔵入りになることも。「ないなら作ろう」とミシンを踏むうち、同じ悩みを抱えた親子がいるのではと考えるようになった。
昨年、発達障害児の母親らにアンケートを取ると、100人中86人が「服にまつわる困り事がある」と回答。中でも一番多かった「服の前後が分からない」との声に着目し、服作りだけでなく、1人で着替えられない子への練習方法や、服にまつわる困り事への理解を広める活動を始めることにした。
息子や支援学校の友人らに試作したカットソーは、伸縮性のある生地を選んで腕周りを大きくとり、脱ぎ着しやすいように。後ろ身ごろを長くすることで、前後が分かるデザインに仕上げた。すそに手のひらマークのワッペンを付けたのがポイントで、「息子も手のマークにタッチして、1人で着られるようになりました。できることが増えると子どもの自尊心を高められ、子育てに希望が持てます」とにっこり。
HPを立ち上げ、今後はセミオーダーで注文を受けるほか、子どもへ服の着方を教えるコツを紹介。理解を深めるパンフレットも配布する。「共感してくれる人や企業が増え、発達障害の人が着られる服が手ごろな価格であふれる世の中になれば」と願っている。
詳細はHP(https://fukufuku312.wixsite.com/fukufuku312n/)かfukufuku312インスタグラム。縫製や広報など、共に活動する仲間も募集中。
写真=試作を繰り返したカットソー。後ろ側に手のマークを付けた
(ニュース和歌山/2019年6月22日更新)