人気作家、重松清原作、堤真一主演で公開中の映画『泣くな赤鬼』。高校野球の強豪校を率いた監督、〝赤鬼先生〟こと小渕と、余命わずかなかつての教え子、ゴルゴとの絆を描く感動作の脚本を担当したのが、和歌山市出身で桐蔭高校野球部OBの上平満さん(47、写真)だ。この作品が脚本家デビューとなる上平さんに話を聞いた。
──重松さんの原作を読んだ第一印象は。
「設定が私の高校時代と状況が瓜二つでびっくりしました。公立高校で、春の県大会で優勝、夏の予選は決勝で敗退、また、和田というキャラクターが外野から三塁手に転向される設定まで一緒。私自身、2年生の新チーム結成時に、外野から三塁に転向した経験があります。作品への印象で言えば、ゴルゴと三塁手を競う選手で、原作ではさらりと触れられていた和田が気になりました。野球のセンスはあるが、お調子者で努力が苦手なゴルゴ。一方の和田は才能はないが、コツコツと努力を続ける才能ではゴルゴに負けない。対照的な2人です。赤鬼を挟んで2人はお互いどう思っていたんだろうと、原作の良さも手伝って、イメージが膨らみました」
──脚本を書く際、気を配った点は。
「原作の良さを損なわないことを第一に考えました。ゴルゴは赤鬼先生に褒めてもらいたいのに、褒めてもらえない。赤鬼がゴルゴに期待しているから厳しくするのに、響かない。両者のすれ違い、伝わらないもどかしさが濃くなるように意識しました。教育的というか、説教臭い話にしないようにも気を付けました」
──この作品を通して伝えたいことは。
「高校野球を題材にした映画ながら、野球に門外漢の方でも分かるお話です。余命ものという形をとっていますが、究極的には成長物語だと思います。かつての教え子の死に臨んで、成長を迫られる先生の話といえるかもしれません。見た後、ボタンを掛け違って、いつしか向き合えなくなったあの人に『また連絡とってみようかな』なんて思ってもらえたら、うれしいです」
イオンシネマ和歌山で公開中。
(ニュース和歌山/2019年6月29日更新)