和歌山市在住の作家、桃木夏彦さん(73)が15日、エッセイ集『思考のシッポのつかみ方』を大阪教育図書から出版した。「口にすると音に化け、文章で活字に化け、頭の中で思考に化ける」言葉について、雌狸ネコポンタと語らう。「哲学的な話ですが、気軽に楽しんでもらえます」と話している。

桃木夏彦さん エッセイ集出版

 桃木さんは故藤本義一さんに師事し、放送作家として活躍しつつ、ルポ『探せ!マカ不思議な3枚の月』や小説『雁首』を発表してきた。大阪や奈良、和歌山で開講する文章講座「桃木夏彦の文章クッキング」20年以上続く。

 今回のエッセイ集はこれらの講座で話したことがベースで、テーマは言葉。物を考える上で欠かせない言葉について2年半かけ執筆していたがまとまらず、約40年前に初めて書いた童話の主人公ネコポンタと語らう形に改稿すると、原稿用紙230枚がわずか3週間で仕上がった。

 「ネコポンタが全部話してくれました」と桃木さん。「虫の居所が悪い」「虫がいい」など、「虫」の一言が精神状態の説明として成り立つ点や、どうでもいいものをひとくくりにする「雑」を使った熟語「雑踏」「雑草」を見つめると、言葉の意味と現実にすきがある点など、言葉の不思議さを丁寧に腑(ふ)分け。一方で、言葉が裏切られると、信頼が失われ、意味が抜け落ちる。「まじめに楽しく愉快に言葉と手をつないでいれば、それがいろんな成果になって表れてきます」と言葉を敬う大切さを説く。

 このほか、「運」や「欠ける」などを独特の視点で語り、既成概念にとらわれない自由な発想のヒントへ導く。桃木さんは「何かと言えばスマホという時代への反動で、最近は思考に関する本がブームです。思考を深め、人生を面白くする鍵になれば」と望んでいる。

 新書判、169㌻。756円。和歌山県内主要書店で販売。大阪教育図書(06・6361・5936)。

(ニュース和歌山/2019年7月27日更新)