アフリカにあるマラウイ北部の農村地で、7月3日までJICA(国際協力機構)が派遣する青年海外協力隊の感染症・エイズ対策隊員として2年間活動してきました。マラウイが位置するサブサハラ・アフリカは世界で最もHIV感染者が多い地域で、マラウイは減少傾向にあるものの15~49歳の感染率は9・6%と、依然深刻な問題を抱えています。近年の主な新規感染者は若い女性で、医学的問題だけでなく経済的、社会的、文化的にも大きな打撃を与えています。

 活動地のムジンバ県北部、エヌクエニでも問題は深刻です。土着の民族の伝統や文化が色濃く残り、一夫多妻制や低年齢結婚を両親が強いる傾向で、女性たちは低年齢出産、HIVや性感染症の危険が高い環境にいます。また、タンザニアから南アフリカ方面へ向かう国道に面しているため、出稼ぎの男性が多く、早婚、低学歴、農村居住で、夫と別居、または死別して1人で子育てする女性たちが多数います。

 このような背景を抱える活動地で、女性たちの健康や生活を守るため、自助グループを立ち上げ、収入を向上させる支援を行ってきました。対象は社会的弱者で、夫と死別している、またはHIV陽性者。農業従事者が約80%を占めるマラウイでは彼女たちも働き手で、家事や育児にも追われています。十分な現金収入がなく、その日暮らしを行うのがやっとというのが現状です。

 HIV陽性者の自助グループは、アフリカ布やその端切れで雑貨を作り、外国人滞在者に販売しています。彼女たちの生活スタイルを崩さずに現金を得るため、作業は内職とし、週1度のミーティングで製品管理と活動資金の運営、管理をしました。また、ミーティングでは彼女たちのアドヒアランス(※)を高めるため、HIV薬の服薬や健康管理などについて説明し、ビジネス、健康の両面からサポートに努めました。

 任期終了後も継続して彼女たちとの収入向上への挑戦は続いています。帰国後は〝AfricAsiA(アフリカジア)〟という名でマーケットを日本にも拡大しようと、アフリカ雑貨販売の支援を行っています。

 私は、和歌山県立医大の学生時代から、ミャンマーの子どもたちに教育の場を提供する活動に参加し、和歌山で現地の状況を発信してきました。今回、8月11日㊐にぶらくり丁で開かれるポポロハスマーケットに出店します。彼女たちの手しごとを通じ、マラウイや近隣諸国の人々の生活、直面する課題を考えるきっかけになってほしいと思います。

 ※アドヒアランス…患者が積極的に治療方針の決定に参加し、治療を受けること。

写真=HIV患者の雑貨販売を支えた筆者(左)

(ニュース和歌山/2019年8月3日更新)