元中学校長 鈴木達也さん〜自叙伝『自慢噺』出版

 和歌山市の元中学校校長、鈴木達也さん(63)が『自慢噺』を出版した。大学の落語研究会出身で、百舌鳥亭枯坊の名で今も落語を披露する鈴木さん。荒れた中学の改革に挑み、様々な壁と闘った38年を軽妙に描いた。

 鈴木さんは1978年、紀伊中を皮切りに有功中、明和中で社会科を担当。江戸時代の時間感覚を教えるため、落語「時うどん」を教壇で演じるなど独自の授業を展開した。その後、鳴門教育大大学院で学び、授業改善を生涯のテーマに。「学校生活で一番長いのが授業。分からんかったら、生徒はつらい。子どもに考えさせ、退屈させない授業が求められています」

 2006年、荒れていた城東中校長に着任し、学校改革に奮闘した8年間をつづった。生徒指導を事が起きて対処する「守り」でなく、生徒の良さを認め、自己肯定感を育む「攻め」に転じ、体育祭や文化祭を復活。生徒の活躍の機会を増やした。

 卒業式は紀伊中に倣い、卒業生と在校生、保護者が向き合う対面式に転換。卒業式で歌う合唱曲の作詞をしたエピソードも紹介した。「式には病気で出席できなかったのですが、後で生徒がお見舞いに来てくれた。自分の思いが伝わっていたのだと本当にうれしかったです」

 子どもを取り巻く生活環境の変化、全国学力テストなど教育課題への思いも明快に記した。「教育現場には、何かあると後が大変だから何もしないとの意識が強い。しかし、新しいことに挑まないと生徒から新しいアウトプットはない。そんな気持ちに教員をさせるのは校長」と同市全中学校長に同書を配った。「落語好きで、人と同じが嫌い。受け狙いの性格が様々なことに向き合う力になった。今の先生にはもっと〝やんちゃ〟になってほしい」と願っている。

 四六判、166㌻。税抜き1112円。宮脇書店和歌山店で販売。

(ニュース和歌山/2019年9月21日更新)