「働き方改革」が叫ばれる中、ライターやデザイナーなどインターネットを駆使し、フリーで働きたい人が活躍できる環境をつくる動きがある。企業とフリーランスをつなぐマッチングサイトの和歌山県内登録者数が数千にのぼったのをはじめ、昨年秋には自分たちの収入を明かしつつ情報交換するチーム「R100」が結成された。フリーランスが交流するコワーキングスペースと呼ばれる作業場も増えており、「生活費の安い和歌山を足場に首都圏から仕事を得るライフスタイルをつくりたい」との声が聞こえる。
生活費安い和歌山 足場に〜自分らしいライフスタイルを
フリーランスは企業に属さず仕事を請ける個人事業主。ライター、デザイナー、プログラマー、カメラマンとクリエイティブな業種に多い。近年はインターネットの普及で、地方に暮らして仕事する人が出てきている。
企業とフリーランスをつなぐ会社、ランサーズ(本社・東京)が運営するグループ「新しい働き方ラボ」の和歌山コミュニティによると、県内の登録者数は現在4000人以上。ウェブサイト運営やデザインの仕事を望む人が多い。コミュニティマネジャーの下方聖司さんは「県内で考えると企業は少なく、選択肢がないと思われがちだが、居住地にこだわらず、力のある人を探している企業は全国に多い。県外の仕事を得る可能性は高まりつつある」と分析する。
こんなフリーで働く有志が昨年9月、チーム「R100」を結成した。フリーで月100万円を稼ぐ目標を名前に込め、交流会を月1回開催し、自分たちの収入を公開。フリーで食べていくため、意見交換をしている。
代表の入口大介さんはライターや、企業の戦略を考えるブランディングで生計を立てており、「自然豊かな和歌山で生活することで、リフレッシュしやすい」と喜ぶ。「やりたいことができないと県外に出て行く人が多いが、『勤める』とは別の形で和歌山でやりたいことができると示したい」と意気込む。
これらフリーランスで働く人、働きたい人の交流の場として増えているのが現在、和歌山市内に5ヵ所あるコワーキングスペースだ。本来はインターネットを使い働く人が自由に作業する場だが、フリーランス同士がつながる場にもなっており、R100もここから生まれた。
同市新通のゲストハウスRICOは宿泊施設でありながら、昨年10月にコワーキングスペースを設けた。マネジャーの橘麻里さんは「旅をしながら仕事をする人と地元のフリーランスをつなげたいと思い始めました」と話す。イベントや交流会も定期的に実施しており、まだ仕事として実現した例はないが、県外から来た人と地元の人が連絡先を交換する姿が見られる。「地方同士、もしくは地方と世界をつなげて新しい仕事の形を生みだしてもらえたら」と期待する。
「新しい働き方ラボ」和歌山コミュニティの下方さんは、コロナウイルスの影響でフリーの補償問題が浮上する一方、会社ではなく、自宅やコワーキングスペースなどで業務を行うリモートワークに注目が集まっていることに着目する。「離れた場所でも仕事ができる考え方がさらに一般化するかも。都会だけじゃなく、どこでも仕事はできると認知され、『働く』ことの形がもっと自由になれば」と願っている。
写真=コワーキングスペースでつながりが生まれている
(ニュース和歌山/2020年3月14日更新)