阪中緑化資材 専用トレー人気
近年の酷暑に頭を悩ませる農家の注目を集める農業資材がある。紀の川市桃山町市場の阪中緑化資材が25年前に開発した育苗トレーだ。側面に穴を開けたポットを複数つなげたもので、穴から水が気化する際の冷却効果で土の温度を下げ、苗のストレスを軽減する。阪中晋社長は「収穫量を増やすには、良い苗、良い環境作りが大切。資材会社として農業に貢献できれば」と話す。
苗を育てる際はビニール製の黒いポットを使うのが一般的だが、容器の中で根が詰まってしまうのが難点。こうした農家の悩みを聞いた先代の敏夫さんは1995年、ポットの側面に空気を取り入れる切れ目を入れた「空中ポットレストレー」を考案し、2004年に国際特許、07年に国内特許を取得した。
根の先端は空気に触れると成長が止まり、代わりに新しい根を作る。根の数が増えると栄養を取り入れやすくなり、畑へ植え替えた後の生育が良く、収穫までの期間が短くなる。また、台の上に置けば作業姿勢が良くなり、体の負担が軽減する。
一方、10年ほど前から、畑へ植え替えず、プランター代わりに大型ポットで育苗から収穫まで行う施設園芸が増えてきた。特にトマトやイチゴは、夏場の高温が苗のストレスとなる。対策の一環として、空気穴から水分が蒸発する際の気化熱で培養土の温度上昇を抑える同社トレーを導入する農家が増えてきた。20年使っても壊れない丈夫さも好評で、ここ10年は3~5万枚と売上は安定している。
昨年は静岡県農林技術研究所の高糖度トマト栽培研究に用いられた。阪中社長は「環境制御技術が発展し、農業の形が進化したことで販路が拡大した。工夫する中小の農家のためにも、要望があればより良い形を開発したい」と意欲を見せている。
(ニュース和歌山/2020年8月29日更新)