43歳から35年〝一歩不留〟〜志學館館長 鳥本智代さん
剣道道場、志學館(岩出市赤垣内)館長の鳥本智代(としよ)さん(78)が10月15日、7段に合格した。剣道は43歳からと遅かったが、薬剤師として働き、家事や子育てをしながら打ち込んできた。「7段としては1年生ですので、もっと勉強を重ね、体の続く限り稽古していきます」とますます意欲的だ。
剣道を習い始めたのは35年前、当時、小学5年生だった次男の一言がきっかけ。「小1から続けていた剣道をやめたいと言い出し、『お母さんもするから、教えてね』と引き留めたんです」。まもなくのめり込み、60歳で定年した後は退職金を使って道場を立ち上げた。「道場があればいつでも稽古できますから。ずっと働いてきた自分へのご褒美でした」と振り返る。
7段は10年ほど前から受けてきたが、合格率2割弱の壁を超えられなかった。今回は試合形式で行われる実技を初めて合格。「覚えているのは胴と面を決めた時の音だけ。それぐらい無心で臨めました」。続く木刀を使っての形も合格し、念願を果たした。「合格者は小さいころから剣道をしていた人が多い。審査されていた全国の先生方からは『長いことかかったけど、良かったね』と声を掛けていただきました」を目を細める。
78歳での7段合格を教え子も喜ぶ。3年前から指導を受ける西村亮良(あきら)くん(11)は「やさしい先生ですが、先生同士で試合をしているときはとっても元気だと感じます。合格は本当にすごい」と話す。
座右の銘は『一歩不留』。「その場に留まらず、一歩でも前へとの意味です。私の7段合格が刺激となり、年齢を理由に何かをやめるのではなく、年齢を重ねても前向きに取り組んでいこうと思ってくれる人がいたら幸せです」と願っている。
(ニュース和歌山/2020年11月14日更新)