工務店勤務 谷口勝美さん〜知られざる歴史発掘
A3の地図に細かく書き込まれた、地元住民から聞き取った数多くの歴史秘話。街をもっと好きになってもらいたいと10年前から町歩きマップを作り、無料で配布するのが和歌山市有家の裏地工務店、谷口勝美さんだ。「昔からその地を守ってきた人に話を聞き、歴史を掘り起こす作業が面白い。マップを手にし、街の魅力に触れて」と話す。
創業70年の同社で営業サポートを行う谷口さんは仕事柄、地権者と話す機会が多く、本には載っていない貴重な街の歴史を数多く聞いてきた。「このまま自分だけが知っているのではもったいない。何か形に残せないかと作り始めました」
2009年、最初に取りかかったのは、有本・新在家・黒田・太田地区。大門川にかかるレトロな新興橋は、かつて静岡の大井川鐵道で使われた英国製の鉄道橋を1953年に転用した珍しい橋だ。また90代女性から、有本地区の地蔵寺跡は先祖が同寺初代住職で、和歌山城大奥の元女官だったと教わった。地元の人からの情報を元に図書館や博物館で詳しく調べ、知られざる街の話をマップに記載した。
載せているのは、史跡、地名の由来、石碑や天然記念物、老舗和菓子店、野菜直売所など。加納・鳴神・西栗栖地区、秋月・井辺地区、神前・西地区、岩出市金池のマップも作成した。
最新作は10月に1年がかりで完成させた根来寺と周辺。寺の歴史や周辺情報に加え、粉河加太線北側にあり、門前町として栄えた西坂本地区に力を入れた。戦国時代、根来寺の経済を支え、日本で最初に鉄砲を試作したとの記録がある同地区の古い街並みや、現在も見られる堀を紹介する。
「何となく通り過ぎてしまう場所にも物語は必ずある。歴史と今をつなぐのがマップの目的。丁寧に見て歩くと、土地の人が守ってきた尊い思いに出合えますよ」と笑顔を見せる。
和歌山電鐵伊太祈曽駅、紀伊風土記の丘、道の駅ねごろ歴史の丘で配布。裏地工務店(073・488・2725)。
(ニュース和歌山/2020年11月21日更新)