兼題「年賀状」で募集した三幸お正月川柳会。寄せられた193句の中から入選句を発表します。評は三幸川柳会主幹の三宅保州さんです。
一席
年賀状妻も元気と書き添える
喜田 准一
【評】 奥様のことも書き添えるほのぼのとした心配りが伝わってくる佳句です。ちょっとした気配りが家庭円満の秘訣であることを教えてくれる一句です。
二席
趣味ひとつ増えて小太りする賀状
上村八重子
【評】 趣味を持つと交友が広がることもメリットのひとつですね。いただく年賀状が増えたことを「小太りする賀状」と比喩した表現は秀逸です。
三席
ペットにも獣医さんから来た賀状
西川 千鶴
【評】 単にご商売のPRだけでなくペットにも賀状をくれる気配りと、それを喜ぶ飼い主の気持ちが伝わってくるほのぼのとした佳句です。
秀句
ざっと見の後は抽選待つ賀状 平田 元三
年賀状立てた誓いの梃子の役 原 稔
匿名の賀状何かが起こりそう 三枝眞智子
天国の母にも賀状書いてみる 上野美枝子
賀状の写真今年も一人ふえていた さかたきく
郵便受けも磨き賀状をお待ちする 田中 みね
達筆にうっとり名前ない賀状 吉村 幸
書き損じ年賀状にも夢がある 南村 潤子
ていねいに二枚もくれた年賀状 川上 智三
一度だけ行った宿から来る賀状 石田ひろ子
年賀状犬も家族に名をつらね 宝井 綾子
年賀状今年の音でくるポスト 古久保和子
たくさんの「年賀状」の句をご投句いただきありがとうございました。川柳の醍醐味である人間や暮らしを詠んだほのぼのとした句や、新年の意気込みが伝わってくる佳句を選ばせていただきました。今年も川柳欄へのご投句をお待ちしています。
選者吟・平凡な賀状でもよい元気なら
入選
年賀状今も自筆のアナログで 白井三重子
年賀状出番待ってるプリンター 杉本 俊枝
年賀状肉筆少し入れにけり 宮本 杜史
年賀状うれし一言添えてあり 中村 良一
楽しみは賀状の隅のペンの字に 福島 一雄
返事来ると信じて書いた年賀状 藤井 真
年賀状近況を聞く良い機会 西野 友子
賀状来て友は元気と安堵する 北原 昭枝
半世紀唯一繋ぐ年賀状 佐武 孤舟
幸多かれと筆にたくして書く賀状 福本 聖子
いつまでも手書き美人になりたくて 実宝 晴美
羊さん笑っているよ前向きに 松嶋 正治
賀状出す母と息子に二枚のみ 荒木美登里
初孫から初めて届くおめでとう 前西 幸子
孫までが秀句目指せと来る賀状 大橋 貞子
孫達の年賀三枚待っている 藤井 節子
年賀見て長い繋がり有難う 浅原 孟
もう昼や届いているか年賀状 山裾かず子
賑やかにキラキラ笑う年賀状 瓦野 正美
働いていると賀状の元気な字 辻内 次根
写真入り自己満足の年賀状 宮地 良和
賀状から忽ち友の若い顔 川端 章子
六十の手習い筆で先ず賀状 尾家 章夫
絵手紙で成長見せる年賀状 福重 美子
その中の自筆の賀状温かい 玉置 当代
旧友の癖字楽しい年賀状 楠見 章子
年賀状の筆力を見て元気知る 木下 侃大
娘の賀状モミジの手形押してある 磯部 義雄
初孫の紅の手形で沸く賀状 岡本 昇
待ち遠しい来年どんな賀状かな 谷口 寿彦
年賀状今年も済ませホッとする 松本五十雄
年賀状書く手に響く除夜の鐘 宇野 幹子
干支の印幸せを呼ぶ年賀状 三河与至子
賀状一面一年間の里便り 佐藤 まき
下手な字がアートに見える年賀状 定松 宏枝
出さないと来るかと思う年賀状 北口 豊
ドイツからローマ字踊る年賀状 小原 敏照
パリからの賀状はみでるハネムーン 早井つや子
年賀状わたしに課する初言葉 倉橋 悦子
一枚の賀状がドラマ語り出す 酒井 純子
付き合いの糸切れぬよう出す賀状 楠原 富香
生きている証しに送る年賀状 森口 美羽
親からの達者もらって書く賀状 谷口 富代
おめでとう未三代闊歩する 北山 絹子
母想う言葉のダイヤ子の賀状 楠本 智子
当分は無理と閻魔に出す賀状 米澤 俶子
そわそわと探す意中の年賀状 根田よしこ
細くなる年賀の束に手を合わせ 上野 寛
自己宛の賀状一文字忍と書く 長谷川葉子
寿と一字書くのに筆下ろす 中西 宏夫
(ニュース和歌山2015年1月3日号掲載)