人気の黒潮市場

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 昨年1年間で県内に宿泊した外国人が、過去最高の30万3574人を記録した。前年比4割増で全国平均の3割増を上回る。円安と格安航空会社の増便を追い風に、県や民間企業による海外へのプロモーション活動が功を奏した。特に和歌山市は前年の2万2000人から6万人と2・7倍の増加。香港、台湾ではマリーナシティとたま駅長、和歌山城の人気が高い。中国では関西国際空港利用のツアーが増え、宿泊者が前年の4・9倍と急増している。

 マリーナシティの黒潮市場、人気のマグロ解体ショー。職人がさばき始めると、カメラや携帯電話を手にした台湾や香港からのツアー客が続々と集まる。団体旅行で訪れた台湾のチン・インツーさんは「日本の市場や地方を知りたくて和歌山に来ました。こんなに大きなマグロを見たのは初めて」と笑顔。チンさんのツアーは5日間で大阪、京都、奈良、和歌山を巡る。この日は和歌山城と黒潮市場を見学後、みなべ町の温泉付きホテルへ出発した。

 黒潮市場を訪れた外国人は2013年が6万人、昨年は9万人でうち7割が香港、台湾。同社企画宣伝課の山路晃弘課長は「今年は10万人を超える勢いです」と話す。同社は08年に海外営業を開始。昨年はタイやマレーシア、中国などを14回訪問した。市場には中国人スタッフ4人が常駐し、昨年10月から解体ショーの説明を常時、中国語で同時通訳する。山路課長は「海外メディアの取材が増え、最近はレンタカーや、電車とバスを乗り継いで来る海外の個人旅行客も多い」と語る。

関空利用ツアー増

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 一方、平日午後8時、和歌山市南汀丁の和歌山東急イン。大型バスから炊飯器やドライヤー、健康食品、化粧品を抱えた20人が降りてきた。中国江蘇省からの団体客だ。「あすの朝10時にチェックアウトして関空へ行きます。ここに泊まるのは3回目」と添乗員のチョウ・シュンオウさん。中国では成田から入国し、関西国際空港から出国するツアーの人気があり、大阪のホテルが取れず、最終の1泊を和歌山や滋賀にするツアーが増えている。

 東急インの外国人客は昨年が1万9000人で前年の約6倍、うち9割が中国人だ。市内を観光する時間はないが、チェックイン後、周辺のレストランやコンビニエンスストアへ出掛ける客も。同市ト半町のラーメン店、麺屋ひしおの古田澄夫店長は「中国の方は多い日で一度に30人ぐらいいらっしゃり、店に入りきらないこともあります」。チョウさんは「個人的に歴史好きなので出発前に毎回、行程にない和歌山城を案内します。いつか市内をゆっくり観光できるコースも巡りたい」と話していた。

受け入れ体制強化

 外国人旅行者の増加を受け、県と市は今年度、受け入れ体制を充実させる。県は個人旅行客をターゲットに地方創生交付金2億2000万円を外国人がよく利用する公衆無線LANの整備に、1億9200万円を道路と公共施設にある看板の多言語表示化に充てる。

 市観光課は4月、海外向けの誘客班を新設。谷口敬哉班長は「マリーナシティや貴志川線、ホテルなど民間がおもてなしに力を注いでくれたおかげで和歌山の評判は高い。ツアーの最終日に来る中国の方らは和歌山が目的でないが、確実に和歌山市を知るきっかけになっている」とみる。昨年6万人を記録した市は今年、10万人突破を目指している。

写真このページ上から=スマートフォンでマグロ解体ショーを撮影する台湾の団体客、チェックイン手続きをする中国のツアー客

(ニュース和歌山2015年5月2日号掲載)