社会福祉法人「一峰会」のあすなろ共同作業所(海南市阪井)が県産品にこだわったパウンドケーキ「紀州路パウンド」を開発した。幅広い名産を盛り込んで和歌山の新名物を目指すとともに障害者の働き場確保につなげたい考えだ。
紀州路パウンドは、「紀伊国屋文左衛門」「色川茶」「有田みかん」「紀州備長炭」「南高梅酒」の5種類。「紀伊国屋文左衛門」は、中野BCの協力で清酒と酒かすを使い、日本酒のうまみを凝縮した。「色川茶」は石臼で手引きした風味豊かな那智勝浦の茶を練り込んだ和風菓子、「有田みかん」は、有田みかんから濃縮果汁をしぼり、甘酸っぱい味そのままに焼き上げた。
パン職人の経験がある職業指導員の入江文彦さんが中心となり、約3ヵ月かけ開発。入江さんは「甘さを控え、それぞれの味が余韻として残るようにしました」。
誕生の背景に障害者の就労事情がある。同作業所は9年前に設立され、現在、精神障害者約40人が通所する。主に日用雑貨品の下請け作業を行うが、時給が安く、障害者年金を合わせても生活は厳しい。そんな中、同作業所では、困り事を手伝う「お役立ち隊」など起業を進め、「紀州路パウンド」も従来のパンの製造販売事業を発展させようと開発した。
現在は通所者約10人がケーキづくりから密閉作業までを担い、県内約30ヵ所に卸している。入江さんは「土産品店からは『こんな商品を待っていました』と言って頂ける。和歌山の良い所を県外の人にもっと感じてもらいたい」。施設長の山添高道さんは「精神障害者には、休んでも助け合い、仕事を続けられる職場が必要。和歌山を訪れる観光客が増えている中、お客さんのニーズをしっかりつかんで進めたい」と話している。
おみやげセット(5個入り)980円。1本680円など。和歌山市観光土産品センターほかで販売。同作業所(073・487・5560)。
(ニュース和歌山2015年5月9日号掲載)