【秀吟】
過去の愛しんみり泳ぐ夢の中 中西 宏夫
豆を剥く姑はしみじみ苦労談 宮野みつ江
しみじみと幸せの価値知る湯舟 坂本 夢子
しみじみと人の情けを知る峠 上村八重子
冬枯れの野に咲く花を手で囲い 佐武 康至
しみじみと栞挿んだ詩集繰る 次井 義泰
せせらぎに河鹿奏でるセレナーデ 上野 寛
しみじみと話す言葉にウラがない 喜田 准一
舞鶴に心に沁みる歌がある 岡本 昇
電気つけ大の字に寝た終戦日 今 一歩
しみじみと聞いて自分に置き替える 福重 美子
花びらの弔い今日の温い風 辻内 次根
しみじみと聞けば小言もありがたい 土屋起世子
物溢れしみじみ思う無駄遣い 定松 宏枝
しみじみと主なき靴を磨きます 藤井 節子
しみじみと己を暴く日記帳 宇野 幹子
花の下しみじみ余生考える 佐藤 幸子
しみじみと妻でよかった五十年 田中 みね
親の齢こえてしみじみ親おもう 北原 昭枝
【寸 評】
電気つけ大の字に寝た終戦日 今 一歩
評 灯火管制で電気も点けられない日々から解放された喜びは、戦中派の胸に刻まれています。
物溢れしみじみ思う無駄遣い 定松 宏枝
評 お金さえあれば何でも手に入る時代となり、一句目と対比すると恵まれ過ぎた現代社会への問題提起の時事吟になっています。
※6月の兼題は「ふと」。6月18日(木)必着。
1人3句までです。応募は〒640・8570ニュース和歌山編集部「和歌山三幸川柳会」係へ。
(ニュース和歌山2015年5月16日号掲載)