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 猟師の技、伝授します──。イノシシやシカなど野生動物による農作物の被害が増える一方、猟師の減少と高齢化が進んでいる。そんな中、県内の猟師5人が一般社団法人「和歌山鳥獣保護管理捕獲協会」(和歌山市湯屋谷)を3月に立ち上げた。北浦順嗣会長(67)は「一番困っているのは農家。狩猟免許取得を支援するとともに、捕獲した命を無駄にしないよう、食肉としての活用方法も合わせて指導していきたい」と意気込む。

 和歌山県内の動物による農作物被害はここ10年、3億円程度で推移し、2013年度は約3億3100万円。北浦会長は「私の経験上、イノシシは2年に3回出産し、1回で5頭ほど生む。キツネなど天敵がいなくなり、どんどん増えている」と話す。

 北浦会長は猟師歴46年のベテラン。2005年にはイノシシの習性を踏まえた対策などを指導する「つれもていこら会」を発足させ、被害に悩む農家の声に耳を傾けてきた。一方で心配するのが、猟師の減少と高齢化。「まだ私たちが現役の今のうちに技術を伝え、10年後、20年後の被害が減るように」と協会を立ち上げた。

 現在、会員は猟師や農家ら40~70代の約30人。入会者には、活動歴20年以上のベテラン猟師が捕獲器の製作や、銃による射撃の方法を教える。

 会員の1人、同市山東地区でみかんやはっさくなどを栽培する兼業農家の那須次男さん(68)は今夏の狩猟免許取得を目指している。「周辺はイノシシが多く、畑からの帰りに追いかけられたことも。わなを使った捕り方を学び、少しでも被害を減らしたい」

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 教えるのは捕獲方法だけではない。「捕った動物を廃棄処分するケースが多い。命あるものを捨ててしまうのではなく、生かしたい」(北浦会長)と動物の解体処理方法まで指導する。県はジビエの肉質を示す独自の等級制度を導入しており、イノシシの場合はA、B、Cに分けられる。同協会ではCにも入らない肉も無駄にしないため、日本ジビエ振興協議会(埼玉県)の協力を得て、ペットフードへの活用を模索する。

 5月8日にはシカ肉に小麦粉、ニンジンなどを使った試作品第1弾が完成。北浦会長は「我が家の犬の食いつきは良かった。他の材料を使いながら試作を重ね、年内に製造を始められれば」。同協議会は「抗生物質を口にしている家畜より、野生の動物を希望するペットフード業者も増えている。今後は流通面のお手伝いもしたい」と語る。

 協会では当面、会員100人を目指す。若い世代の入会を願う一方、最近は猟銃ではなく、わなを使った捕獲が増えていることから、北浦会長は「昔のように長時間、山の中を歩き回らなくてもよい。60歳くらいの方でも、まだ10年以上は活躍できます」と呼びかけている。

 協会への登録料1万円。同協会(073・462・3780)。

このページ 写真上から=ペットフードへの活用に手応えを感じる北浦会長、最近はわなでの捕獲が主流に

(ニュース和歌山2015年5月23日号掲載)