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 定時制高校のあり方が変わりつつある。長年、働きながら夜に学ぶ場として知られてきたが、近年、いわゆる勤労青少年は減り、不登校や経済的事情など様々な課題を抱え、定時制を選択する生徒が増えている。この中、県教委は1970年代に設けた定時制課程の閉校基準の見直しを検討しており、教員がこまめに生徒に関われる学びの場として保つ考えだ。

 和歌山県内の定時制高校は現在11校。今春には青陵高校(定時制)と陵雲高校(通信制)が、きのくに青雲高校として完全統合し、伊都高校(単位制)と紀の川高校(定時制、通信制)が再編され、伊都中央高校が開校した。一方、海南高校定時制下津分校が今春閉校、南紀高校周参見分校が来春に閉校する。両校とも応募者の減少が理由だ。

 定時制高校は1948年、中学を卒業し働く青少年に高校教育を受ける機会を与えるため創設された。しかし、全日制への進学率が9割に及ぶようになり、働く青少年は著しく減少した。

 16年前、生徒数に占めた勤労者の割合は13%だったが、最近は2%前後で推移している。定時制の昼間部を設ける学校では、夜間部より昼間部を望む子どもが増え、昼まで授業を受け、午後からアルバイトをする生徒が多い。ある学校関係者は「昼間に正社員で働く生徒は皆無。今は定時制イコール夜間という感じではなくなってきている」。

 増えるのは小中学校で不登校を経験した生徒だ。割合は40%を超え、県教委総務課は「全日制で過ごす自信のない子、なじめず転校してくる子が、次の一歩のため選ぶ傾向がある」と語る。

 この兆しが見え始めた80年代以降、国は単位制導入や、通信制との併修を可能にし修業年限を4年から3年にできるようにするなど改革を推進。1年間アルバイトを続け、レポートを記せば単位を得られる実務代替など生徒に配慮した科目が可能となった。

 きのくに青雲高校の岩崎博校長は定時制の現在の役割を「様々な事情、課題を抱えた子どもたちのセーフティーネット」と言う。「生徒には大学に進みたい、就職したいとそれぞれ希望がある。定時制は人数が少なく、教員が生徒一人ひとりの事情に即し柔軟に指導できる。達成感を得ている生徒も多い」

 和歌山大学観光学部2年で、学生起業家として世界コンクールに出場した小幡和輝さんは耐久高校定時制出身だ。「小中学と長年不登校で、最初は嫌々でしたが、おとなしかったぼくを先生が常に気にかけてくれ、助けられました」と振り返る。「自分がある出会いを通じて様々なイベントを始めた後も先生は応援してくれ、人間的なかかわりが持てました。周囲に流されず、自分を持って歩むと、学校はこたえてくれると思う」と強調する。

 県教委は県立高校再編に合わせ、従来の「入学者数が2年続け募集定員20%未満なら募集停止」とする基準を見直す方針で、今年2月、県立高校再編を語り合うきのくに教育審議会で意見交換。委員からは「小規模な学校は生徒を全体的に見る環境として重要」との声が強かった。県教委総務課は「定時制の質が変わり、従来の基準では考えられない。紆余曲折(うよきょくせつ)をへて、生徒が自らのポテンシャルを発揮できる場になれば」と望んでいる。

写真=きのくに青雲高のキャリア講習。講師は小幡和輝さん

(ニュース和歌山2015年5月30日号掲載)