【秀吟】
しみじみと行く末おもう二十五時 楠見 章子
父母を偲ぶ大きな傘だった 武本 碧
しみじみと在りし日偲ぶ国訛り 山田 髙夫
しみじみと飲んでしみじみ酔うている 森口 美羽
しみじみと反省してるキリギリス 廣瀬美智代
来た道をしみじみ悟る蝸牛 玉置 当代
しみじみと母の愚痴聞くカエルの子 福本 聖子
しんみりと風の私語きく昼下がり 山裾かず子
衰えをしみじみと知る足の裏 川上 智三
螺鈿の文箱遠い月夜の海を恋う 米澤 俶子
手に馴染む湯呑みわたしを取り戻す 石田ひろ子
しみじみと七十年を振り返る 磯部 義雄
しみじみと語る暇ない蟻の列 酒井 純子
もつれ糸しみじみ解いて行くしじま 古久保和子
三席・啄木を追体験と手を眺め 西川 千鶴
二席・しみじみとふたり暮らしの三コマ目 上野美枝子
一席・狭かった家も今では広過ぎる 楠原 富香
選者吟・ライバルと虚心坦懐飲み明かす
【寸評】
しみじみとふたり暮らしの三コマ目 上野美枝子
狭かった家も今では広過ぎる 楠原 富香
評 賑やかだった家庭も両親などが亡くなり、子も結婚などで家を出ていって夫婦二人きりに。理由をくどく詠まずに「三コマ目の暮らし」、「広過ぎる」と間接的かつ比喩的に詠んで味わい深い佳句に仕上げられた力作です。
※6月の兼題は「ふと」。6月18日(木)必着。
1人3句までです。応募は〒640・8570ニュース和歌山編集部「和歌山三幸川柳会」係へ。
(ニュース和歌山2015年6月6日号掲載)