現代劇にミュージカル、伝統芸能…。舞台を見るのが好きな人でつくる「和歌山演劇鑑賞会」が発足50年目を迎えた。自分たちが見たい公演を行う劇団を招いて開いた観劇会は、これまで337回を数える。代表幹事の神崎務さんは「子、孫と3世代で会員の方もいる。今、子どもの会員が親になったとき、その子にもつないでいけるよう、文化の灯を守り続けたい」と話している。
会員からの会費だけで運営する非営利の会。最近は年間6回の観劇会を実施する。見るだけでなく、事前に演出家や制作者を招いて話を聞いたり、舞台の魅力を手づくりの機関誌にまとめたり。当日の受け付けや搬入・搬出も手伝う。
1971年には仲代達矢主演の「オセロ」、89年は杉村春子による「女の一生」、2012年は平幹二朗の代表作「王女メディア」などを和歌山で実現してきた。神崎さんの印象に残るのは、1987年の「おんにょろ盛衰記・三年寝太郎」。翌年、亡くなった名優、宇野重吉が出演した。「すでに体調が悪く、舞台袖で酸素吸入器を使っていました。でも、舞台に戻り、客の前に出ると、そんなことはみじんも感じさせなかった。役者魂に触れました」
66年の発足当初、660人だった会員が90年には4000人を超えた。以降、泉南、紀北、岸貝の各演劇鑑賞会を立ち上げ、現在、4団体でつくる阪和演劇鑑賞協議会に5000人近い会員がいる。入会は原則3人以上で、入会金(2000円)と月会費(2600円、学生2000円、中高生1000円)を払えば、公演ごとの入場料は必要なし。和歌山だけでなく、泉南、紀北、岸貝の公演も無料で見られる。
入会者には、1年間は舞台を見るよう求める。寺下朋子事務局長は「『出演者は知らない人で、テーマは暗そうだったけれど、すばらしい作品に出合えた』と感動し、1年が経過した後も活動する人は多い。20年選手や50年間入っている人もいますよ」。
今月の観劇会は風間杜夫、加藤健一主演のコメディ「バカのカベ」。6月19日(金)午後6時25分、6月20日(土)と6月21日(日)は各2時、和歌山市民会館小ホールで。年内は、8月に井上ひさし作「父と暮せば」、10月が小林多喜二原作「蟹工船」、12月は劇団ヴォードビルショーによる「パパのデモクラシー」を予定。入会は公演会場でも可。同会(073・433・1151)。
写真=観劇会に向けた会員の運営会議
(ニュース和歌山2015年6月13日号掲載)