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 戦前戦後にかけ、市民の足として利用されていた市電の写真を、和歌山市木広町の中川聖子さんが6月17日、同市湊本町の市立博物館へ寄贈した。2ヵ月前に他界した夫、隆人さんが撮影してアルバムにまとめた3冊。聖子さんは「全国のローカル線を撮るのが趣味だった主人に『71年間生きた証を残したい』と亡くなる前に頼まれました。きっと主人も喜んでくれているはずです」と目を細めていた(写真)

 和歌山市駅から和歌山駅、海南駅を走っていた市電の全路線を廃線前の70年と71年に撮影。全ての写真に「終点新和歌浦はどこからともなく潮の香りが漂う」「毛見トンネルの暗闇をぬけると海南市」など乗客目線でコメントを書いている。手書きの路線図と、周辺の山や川、観光場所を立体的に描いたイラストも添えている。額田雅裕館長は「一定の期間に撮られ、町の景色が写り込んでいる。当時の沿線の景観が分かる貴重な資料です」。

 牧歌的な雰囲気にひかれ、50年ほど前から全国のローカル線を撮影していた隆人さん。車で寝泊まりしながら、始発や2時間に1本しか走らない電車のベストショットをねらった。10年前から撮影に同行するようになった聖子さんは「東北では雪の中で待ったことも。今思えば、一緒に車の中で電車を待つ時間が楽しかった」と懐かしむ。

 写真は今回寄贈したアルバム以外に100冊以上あり、活用してくれる博物館を探している。

(ニュース和歌山2015年6月24日号掲載)