紀の国わかやま国体の開・閉会式や陸上競技が行われる紀三井寺公園にほど近い西国三十三所第2番札所、紀三井寺。その参道沿いで長年、壊れたままになっていた石灯ろうが修復された。和歌山市三葛の洋画家、中尾安希さん(73)が寄付を募り、自らの作品を販売して集めた約125万円で復活させた。「第1番札所の青岸渡寺、第3番の粉河寺には立派な石灯ろうがあるのにと感じていました。真新しい灯ろうも日がたてば景色になじんでくると思います」。7月4日(土)、除幕式を行う。
地元、和歌浦の風景を描き続ける中尾さんは、紀三井寺のすぐ近くで生まれ育った。寺は幼いころの遊び場だったが、「当時から石灯ろうは壊れていました」。土台部分だけ残っていたり、火を灯す「火袋」と呼ばれる部分がなかったり、さらに階段をはさんで左右に並ぶ2基の火袋が違う形をしていたり。「壊れた石灯ろうを長年見続けている人は違和感がないかもしれませんが、画家の目では以前から気になっていました」
紀三井寺公園が近い寺周辺は、合宿や大会で宿泊する選手が多く、石階段で足腰を鍛える姿がよく見られる。「せっかく国体で多くの人が紀三井寺に来られますから、その前に直し、ここを上って、境内から見下ろす万葉ゆかりの地、和歌浦の風景を楽しんでもらいたい」と今春、修復に向け、活動を始めた。
個人や企業を回り、寄付を集めたほか、5月上旬に開いた個展で自らの作品と絵ハガキを販売。修復資金を確保した。5月中旬に工事を開始し、表参道沿いの5基、裏参道沿いの1基の計6基が6月20日、新しくなってお目見えした。前田泰道副住職は「やはり存在感があります。参道両脇の石灯ろうを見ると、夜に参拝する方の足下を照らすのが本来の役割だったんだと改めて感じます」と喜ぶ。
中尾さんは多くの寄付が集まったことへの感謝の気持ちを込め、妻・安佐さんの提案でしだれ桜を植樹した。場所は裏参道沿いで修復した石灯ろうのすぐ側。「末永い世相の安全、安心を願い、〝あんあん桜〟と名付けました。来年の春には咲くそうです」と毎日の水やりを欠かさない。
7月4日の除幕式は午前10時から。楼門集合。中尾さん(073・445・2756)。また、7月7日(火)午後6時からの「七夕・祇園祭」では新しい石灯ろうに明かりを灯して来場者を出迎える。
写真=国指定重要文化財の楼門をくぐって すぐの石灯ろうも新しく
(ニュース和歌山2015年7月4日号掲載)