2011年3月11日の東日本大震災で犠牲となった宮城県石巻市立大川小学校の児童たちを心に留めようと、遺族らが同小近くで育てているひまわりの種が和歌山へ渡り、小学校を中心に広がっている。昨年は海南市、白浜町、今夏は和歌山市内で育てる小学校が飛躍的に増えた。各校はひまわりを通じて命と防災の大切さを伝える。また、県は今秋の紀の国わかやま国体・大会の開会式に合わせ、ひまわりを咲かせて全国の選手を迎える準備を進めている。
大川小では、児童108人のうち74人が津波により死亡・行方不明となった。児童の遺族らは11年6月、学校近くの通称、三角地帯にひまわりの苗を植えた。児童と保護者がよく季節の花を栽培した思い出深い場所で、母親らは子どもたちに思いをはせた。毎年続けており、その思いは絵本『ひまわりのおか』(岩崎書店)にまとめられた。今年は盆に花が開く。
和歌山のNPO青少年国際福祉教育協会、和歌山環境エコ・アクション・ポイント協会は12年、石巻市を訪問。ボランティア活動を通じて遺族と出会い、種をゆずり受けた。持ち帰り、その夏は慶風高などで咲かせた。
種は昨年、中野上小(海南市椋木)など県内数校へ。中野上小では、校内で育て、当時の藤田直子校長が『ひまわりのおか』を集会で朗読。成長するひまわりに重ねた母親たちの気持ちを伝えた。 秋以降は「ひまわりの絆活動」とし、学校や中野上公民館で育てた花の種を低学年児童が収穫。児童会が海南市、紀美野町の学校に種の提供を申し出て、約10校の小中学校へつないだ。
今年は巽小(同市重根)で育てる藤田校長は「ひまわりは育てやすく、親しみやすいのがいい。育ち増える様子にふれ、他人も自分も大切にする思いやりの心を育めれば」。
南野上小(同市次ケ谷)でも児童が地域の人と公民館近くの休耕田に植え、150本が花開いた。山本正巳館長は「絆のひまわりです。東日本の悲しい思いを共有し、忘れないよう行事ごとにひまわりについて話します」と語る。
和歌山市内では小学校20校で育て始めた。宮小(同市秋月)では校門近くの花壇に「東北からのひまわり」と記し、栽培委員会が水やり。6年の岩倉愛七さん、白川七彩さん、森愛賀さんは「地震が起きたら小さい子を守れるようしっかりしたい」「津波が怖かったのを覚えている」と成長を見守る。中村祐佳子教頭は「お母さんたちの思いのこもった花。命の大切さを学年に応じた形で伝えたい」。
また、県は今秋の紀の国わかやま国体・大会の開会式会場にひまわりを植え、選手、来場者を迎える。今国体が東日本震災復興支援を掲げているのを受け、支援ブース設置や被災者招待に合わせ実施する。県農業試験場は状態の良い種1500粒を選別し、開会式と開花がずれないよう5回に分けて種植えを進める。
種を広めたNPO青少年国際福祉教育協会理事で、県議の片桐章浩さんは「和歌山がひまわりを守る姿を見てもらえば東北の人の励みになり、和歌山は東北を忘れていないと感じてもらえると思います」と力を込める。
娘を亡くし、ひまわりを植え始めた母親の一人、石巻市の狩野あけみさんは「震災で多くの人が亡くなったことを受け止め、1人でも津波に前もって気をつけるようになってほしい。それが1人、2人の命を救い、悲しい思いをする人を減らせます。知らない土地で一生懸命に育てて頂けてうれしい。子どもたちにはひまわりのような笑顔で毎日、過ごしてほしいです」と望んでいる。
写真 このページ上から=「東北からのひまわり」と記し育てる宮小/最初に和歌山で咲いた花
(ニュース和歌山2015年8月1日号掲載)