総合開会式が9月26日に開かれ、本格的に競技が始まった紀の国わかやま国体。序盤から和歌山県勢の活躍が目立つ。9月28日にはレスリング競技フリースタイルで3選手が頂点に立った。その一人、ロンドン五輪銅メダリストで成年男子61㌔級の湯元進一(自衛隊体育学校)は地元国体を最後に引退、有終の美を飾った。(文中敬称略)
3人の優勝、口火を切ったのは湯元だった。準々決勝で過去、苦戦してきた菊地憲選手(秋田)を7─2で下すと、準決勝はテクニカルフォール勝ち(10点差以上をつけての勝利)を収めた。
双子の兄で、北京五輪銅メダリストの健一、レスリングの基礎をたたき込まれた父、鉄也がマットのすぐ横で見守る中、迎えた決勝。第1ピリオドを1対1で折り返し、第2ピリオドにギアを上げた。終盤、立て続けにポイントを奪い、6─2で快勝。試合終了のブザーが鳴ると、拳を突き上げた。「兄と父からは『思い切ってやれ』『湯元のレスリングを出してこい』と言われていた。硬さはなかった。ホッとしているし、優勝できて大好きな和歌山に少しは恩返しできたと思います」
湯元が有終の美飾る 続いた高校生2人 五輪見据え
湯元の優勝が、少年男子66㌔級の三輪優翔(和歌山北高校2年)に火を付けた。「自分もこの流れをつながないと」。準々決勝、今夏のインターハイで敗れた上野千紘(青森)を3─1で退けるなど、終始高い集中力を発揮し、落ち着いた試合運びを見せ、決勝も5─0と相手にポイントを許さなかった。「高校生のレベルでなく、もう1つ上のレベルで通用するように。目標は2020年、東京五輪での優勝です」
優勝を決め、マットを下りた三輪がそっと握手したのは高校の1年先輩、74㌔級の吉田隆起(写真 このページ上)だった。入れ替わるように決勝に臨んだ吉田は、片足タックルを決めると、相手の足首を固定するアンクルホールドから連続得点を奪い、わずか1分18秒で試合を決めた。準決勝までの3試合を含め、全試合10─0のテクニカルフォール勝ちと圧勝で、今春の全国選抜、夏のインターハイと合わせ3冠を達成した。「追われる立場でしたが、地元和歌山で自分からどんどん攻める原点に返れたのが良かった」。笑顔がはじけた。
実は吉田、昨年夏に腰のヘルニアを患い、以降は薬を飲みながら競技を続けていた。「地元国体のために、手術を先延ばししてきました。来月、手術を受けてしっかり治し、東京五輪、そしてその4年後の五輪でもチャンピオンになれるよう頑張りたい」
試合後、湯元は引退を表明。その背中を目に焼き付けた吉田と三輪は、しっかり五輪を見据えていた。少年男子県チームの森下浩監督は「湯元の戦いが2人に勇気を与えたのは間違いない」。それを聞いた湯元は「2人は僕より安定しているし、決勝も安心して見ていられた。刺激になる活躍ができたなら、良かったですね」。戦いを終え、優しい眼差しを見せた。
1つの時代が終わり、新たな時代が始まった。
写真 このページ中、下=現役最後の勇姿を地元で見せた湯元、相手のバックをとる三輪
まだまだ熱戦展開中 残り4日の開催競技(本紙配布地域)
紀の国わかやま国体も10月3日を含め残り4日。まだまだ熱い戦いが繰り広げられています。この中から本紙配布地域での競技を紹介します。
【和歌山市】 陸上競技(10月6日㊋まで、紀三井寺公 園陸上競技場)▽柔道(10月3日㊏~10月5日㊊、手平のビッグウエーブ)
【海南市】 銃剣道(10月3日㊏~10月5日㊊、大野中の市総合体育館)
【岩出市】 バドミントン(10月5日㊊まで、荊本の市立市民総合体育館)
【紀の川市】 ソフトボール(10月3日㊏~10月5日 ㊊、貴志川町井ノ口の貴志川スポー ツ公園と粉河の粉河運動場)
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※いずれも観戦無料です。
※一般駐車場がない会場もあります。詳細は各競技開催市町村の国体実行委に問い合わせるか、国体HPで確認ください。
和歌山市…073・433・6790
海南市……073・483・8629
岩出市……0736・62・2141
紀の川市…0736・77・0894
(ニュース和歌山2015年10月3日号掲載)