日本人女性で唯一、タイ王国公認の現役象使いとして活動する女性がいる。和歌山市の大亦(おおまた)理絵さん(31)。何度もタイへ足を運び、観光客を背に乗せ、時に絵画を描く象の世話をし、その技を磨く。10月12日(月)から再びタイへ渡り、象の育成やケアに関する学校で日本人向けの授業を担当。「大自然の中に身を置くと、人間が自然界の一部に過ぎないことに気付きます。異なる視点で物事を理解する経験は、心の豊かさが失われたと叫ばれる現代にこそ必要だと伝えたい」と意気込んでいる。
直川小、紀伊中学校を経て高校に入学したがすぐに中退した。大学入学資格検定を受けて武蔵野美術大学へ進学し、映像と写真の技法を学んだ。卒業後はイタリアで写真家として活動し、25歳で帰国。全国の廃校活用を調査するグループのメンバーとして、撮影のため全国を飛び回る。
昨年、スリランカでエレファントライディングを体験した。初めて乗った瞬間、「一緒に暮らしたい」と直感。象使いの資格が取得できるタイへ。専門の養成所で象との暮らしが始まった。
早朝4時から2・5㌧ものエサを運び、日が昇ると象が眠る森の中へ迎えに行き、入浴させてエレファントキャンプへ移動。観光客を乗せたり、絵を描いたりと忙しい象を世話し、生態や扱い方を学んだ。初めは先輩の象使いについて行動していたが、経験を重ねる内に1人でできるように。「象語というのがあるんです。一緒に過ごしているとそれが分かり、意思疎通できるようになります」。現地の人と信頼関係を築き、写真家の腕を生かして観光用のポスターで使う写真の撮影法を指導することもある。
将来の目標は国連への就職。「水場で象を洗っていると水をかけられることがあります。象に遊ばれているうちはまだまだ力量が足りない証拠」と笑い、「タイでは象が人と共存し、人が家を建てるのを手伝い、スマトラ島沖地震の津波の際は人々を助けた。自然の中で人がどう生きていくのかを探求したい」と抱負を語っている。
写真=象の力作を手に笑顔の大亦さん(提供=セクサン・ディショ)
(ニュース和歌山2015年10月10日号掲載)