2016062508_rakugo 高齢化が進む中、認知症予防に落語を生かそうと、患者の心情を盛り込んだオリジナルのネタを披露する医師がいる。和歌山県立医科大学神経内科講師の廣西昌也さん(52)。7月3日(日)に開かれる和歌山医学会総会市民公開講演会の冒頭でも一席披露する。「認知症は自分にも家族にも起こりうる。物忘れなど暗い面はありますが、笑って、楽しい思い出に目を向けながら人生を生き抜いていけるように──。そんな思いを込めて演じたい」と笑顔を見せる。

 三遊亭円生に桂米朝、枝雀…。子どものころから落語を聴くのが好きだった廣西さんは5年前、大阪市の天満天神繁昌亭で落語入門講座を受講した。以降、市民講座や患者会では医学的な講演と落語をセットにして披露する。「手ぬぐい、扇子と最小限の道具だけを使い、あとは演者の語りと仕草で、聞き手の頭の中にイメージを作り上げる。それが脳を活性化させます」と説明する。

 『子ほめ』『鉄砲勇助』などの古典落語を行うこともあるが、最近は認知症などをテーマにした自身の創作落語にチャレンジしている。3日に披露するのも、認知症の妻とその夫が登場する新作『忘れても好きな人』。「落語というと笑いばかりと思われがちですが、合間に患者さんの心の機微を入れ、心情を伝えられるよう配慮しています」。さらに患者やその家族が認知症と付き合っていくためには、あたたかい言葉と表情が何よりも重要だと言い、「落語の表現力を多くの人に知ってもらい、認知症の介護にも生かしてほしい」と願う。

 3日の講演会「県立医科大学新任教授に聴くこれからの和歌山県の医療」は午後2時半、和歌山市美園町のJAビル2階。廣西さんの医療落語に続き、新任教授ら4人が「関節リウマチ診療に生物学的製剤がもたらしたもの」「小児における心臓の病気」などをテーマに話す。200人。申し込み不要。事務局(06・6231・2723、福田商店広告部内)。

(2016年6月25日号掲載)