和歌山市は8月23日、10代の自殺対策として、教職員や医療、保健、福祉に携わる約100人を対象に同市吹上の市保健所で研修会を開いた。若年層に特化した研修は初めて。教育現場で自殺問題に取り組むカウンセラーの阪中順子さんが講師を務め、「教員とNPO、医療、福祉の専門家が連携し、子どもの命について共に考えることが大切」と力を込めた。
全国の自殺者数は2003年の3万4400人がピーク。09年以降は減少を続け、15年は2万4000人まで下がった。和歌山市では年100人を超えたこともあったが、近年は60~70人に減少している。若年層も減少傾向にあるが、中高年に比べ減少率は低く、20歳未満は横ばいが続く。
同市は主に中高年向けの自殺防止対策として10年から相談や啓発を行っているが、児童・生徒への対策は遅れていた。市保健対策課は「子どもたちが相談できる力を付け、周りの大人が気づく力を養えば、その後の自殺を予防できる」とみて、現状を把握し、どう対策するかの研修を決めた。
阪中さんはまず、10~30代の死因1位は自殺と話し、原因は学業不振、家庭問題、友人との不和、うつ病などと説明。中でも、自己肯定感の低い子の4割が、「不安、悩みがあると死にたい気分になる」と答えたことから、「認めあえ、高めあえる機会をつくる大切さ」を強調した。
この後、グループ別に、生徒が落ち込んでいるときに、「励ます」「叱る」「気持ちを聞く」と対応を変えたロールプレイを行い、気持ちがどう変わるかを確認しあった。 紀伊中学校の尾前真一教諭は「生徒の状況を把握し、心に寄り添い、本心を聞くこと、言葉かけの大切さを改めて感じました」。小学校養護教諭は「保健室に来ても、すぐに話さない子がいて、寄り添うだけのこともありました。一人で抱え込まないことの重要性を再確認しました」。
また、自ら命を絶とうとする人を救おうと活動する心のSOSサポートネットメンバーで精神保健福祉士の東香さんは「1人で1人を支えるのは限界がある。網の目のように、大勢で大勢を支えたい」との思いを強めていた。
写真=参加者のロールプレイを確認する阪中さん(左)
(ニュース和歌山2016年9月3日号掲載)