和歌山市を拠点に活動する劇団ノスタルジアが、結成30周年記念公演『月影─ツキノヒカリ』を25日(日)、和歌山県民文化会館小ホールで行う。全作オリジナルの脚本で定期公演を重ね、後進の育成にも力を入れており、岡崎義章代表は「観客が出合ったことのない新鮮な作品を発信し、和歌山で演劇文化のすそ野を広げたい」と意気込んでいる。

 脚本も演出も全てオリジナルの舞台をつくろうと、岡崎さんが結成した劇団。県文や和歌の浦アートキューブでこれまで14回、定期公演を開き、2001年には近畿高校総合文化祭の実演行事『紀の道』、06年にはアジア防災教育子どもフォーラム記念創作劇『稲むらの火と浜口梧陵』の脚本と演出を手掛けた。また、和歌山市民会館主催の演劇大学で08年から毎年、指導するほか、県内の学校でもワークショップを開く。

 定期公演は、笑いあり、涙ありのスリリングな2016090312_engeki展開と、スタイリッシュな演出が人気で、30年来のファンもいる。現在は役者10人と、美術や音響スタッフ4人で活動しており、シンプルなセットと衣装に、巧みな演出と演技で、観客の想像力をかき立てる作品が特徴だ。

 今作は、芥川龍之介の小説『羅生門』『偸盗(ちゅうとう)』『地獄変』の世界観をイメージして岡崎さんが描いた。平安時代の都で盗賊と貴族の娘が出会い、悲劇へと展開する叙情的な物語で、「これまでのノスタルジアとはひと味違う、悪党主役の作品です」。団員の川崎ゆかりさんは「舞台は平安時代ですが、現在と共通する部分がたくさんある。自分の環境と照らし合わせ、それぞれに一筋の光を見出してもらえれば」と話す。

 岡崎さんは「和歌山は演劇をしたり見たりする人が少ない。皆で一つの物をつくり上げ、本番一発勝負の舞台で届ける演劇は他にない感動がある。和歌山で演劇の火を絶やさないよう、30年で培ってきた技術を後世に惜しみなく伝えていきたい」と語る。

 『月影』は午後1時半と5時半。2000円、高校生以下1000円、当日各500円増。県文、和歌山市民会館、和歌の浦アートキューブで販売。同劇団(073・456・0414)。

(ニュース和歌山2016年9月3日号掲載)