根来寺(岩出市根来)境内にある根来の子守唄歌碑前に、スマートフォンをかざすと、この歌を動画で聴ける案内板が設置された。今年活動50年目を迎える根来の子守唄保存会(写真)の取り組み。メンバーは「岩出の女性が受け継いできた伝統。後世に引き継ぎたい」と望んでいる。
♪ねんね根来のようなる鐘はヨ♪で始まる根来の子守唄。江戸時代中期の発祥といわれ、紀の川流域で主に歌われた。多くの子守唄が子守りの苦労を歌うが、この歌は「がりゅう松」「住蛇池」と地域の風物や風景が盛り込まれているのが特徴で、保存会の大谷聖子さん(73)は「叔母が弟を子守りする時に歌ってくれ耳にしみています。昔が目に浮かぶ忘れることのできない歌」と語る。
保存会は1966年、子守唄を郷土芸能として発表するために集まったのが最初。歌にオリジナルの振りを付け、かすりの着物に黄色い帯という衣装をそろえた。現在は50代後半から80代までの25人が月1回練習し、小学校や老人ホームを訪れ、伝承に力を入れる。全国子守唄サミットにも精力的に参加している。
昨年11月、根来寺のかくばん祭りの際、歌碑の前で「子守唄を聴きたいな」と話す人の声を聞いたメンバーが提案。近年、観光スポットに増えている専用アプリを活用し、歌を聴ける仕組みをつくった。
案内板のQRコードから、スマートフォンに専用アプリをダウンロードし起動させ、案内板にある女性の絵にかざすと、子守唄が流れ、歌われた岩出市の景色を動画で見ることができる。スマートフォンに保存して、再生し、スマートフォンを通じた伝承も可能だ。
モノクロで懐かしさを表現した映像で、保存会の小倉しのぶさん(68)は「根来の子守唄は岩出にはなくてはならないもの。スマートフォンがあればだれでも聴けるようになり、うれしい」と笑顔。梶本洋子会長(75)は「子守唄を文化として残し、継承者を育てるのが会の役割。興味を持ってさらに引き継ごうと思う人が出てきてほしい」と話している。
(ニュース和歌山2016年10月1日号掲載)