飛行距離367㌔が世界記録認定

 スカイスポーツのメッカとして知られる紀の川市に、ハンググライダー選手として世界を舞台に活躍する女性がいる。トノエアーハンググライダースクール(同市竹房)所属の礒本容子さん(44)だ。2年前の女子世界選手権で優勝し、今年1月にオーストラリアで達成した飛行距離367・6㌔は女性の目的地直線距離世界記録に認定された。「ハンググライダーは生きがいです」と笑顔を見せる礒本さんが次に描く夢は──。

2016108_isomoto2

 大阪府枚方市出身の礒本さんがハンググライダーを始めたのは21歳。出産、育児で離れた時期はあったが、復帰した33歳の時、練習に打ち込めるようにと紀の川市へ移り住んだ。女子日本選手権では2010年、そして13年〜16年と計5回頂点に立っている。

 女子世界選手権は12年のドイツ大会が初参加。この大会は悪天候のために成立せず、実質、14年のフランス大会が初出場となった。空中に設定された複数のポイントを回ってゴールするまでの早さを争い、この大会では50㌔〜100㌔、異なる距離の6レースでの総合成績を競った。過去10年間、女王に君臨してきたドイツ人選手を抑えて優勝。世界選手権で日本人が表彰台に立つのは、男子を合わせて初めての快挙だった。

 今年1月にはオーストラリアの大会に出場。参加した女子選手で唯一、ゴールまでの367・6㌔を飛びきった。東京─京都間と同じぐらいの距離で、「7時間ぐらい飛んでいました。とんでもない距離ですが、海外に行くといろんな可能性がありますね」と笑顔を見せる。

 2016108_isomoto国際航空連盟は7月、この記録を女子の目的地直線距離世界記録に認定。この活躍から、「空の日」の9月20日、日本航空協会の「航空スポーツ賞」を受賞した。

 指導するトノエアースクールの外村仁克(よしかつ)さんによると、「特別、運動神経が良いとか、ハンググライダーに向いているという訳ではない。ただ、とにかくまじめにコツコツ、ずっと練習を続けてきた」。飛行時間は、一般選手なら年間50時間で多い方だが、「条件がそろった日は毎日飛ぶ礒本さんは、多い年で200時間以上。経験を重ねると、自分の手を広げて飛んでいる感覚、まさにハンググライダーが自分の翼のように感じられるようになる。継続は力なりですね」と目を細める。

 名実ともに女子選手では日本一の礒本さんが見据えるのは、「男女を問わない日本代表に入り、世界選手権に出ること。男性の中でどれだけ戦えるかに興味があります」。体力的には難しいが、「風を読む力、そして今の気象条件から次を予測する力。地形も含め、条件という条件を総合的に取り込んで消化する。ハンググライダーは戦略が重要ですし、だからこそ面白いんです」。

 次なる夢を描いた大空へ、きょうも飛び立つ。

(ニュース和歌山2016年10月8日号)