プロの俳優やアマチュア演奏家を招き、各小学校で授業が開かれました。和歌山市吉礼の山東小学校では美しい日本語の話し方を、同市梶取の野崎西小学校では和楽器の演奏方法を教わりました。
山東小 劇団四季の出張授業
『ライオンキング』『キャッツ』などに出演する劇団四季の俳優3人が1日、山東小学校で「美しい日本語の話し方教室」を開いた。俳優の堂々とした振る舞いと、よく通る声で行われた授業に5年生40人が熱心に取り組んだ。1組の蛯名悠月(ゆづき)くんは「分かりやすい説明で、心に染みいる内容だった。相手を思いながら話すことが大切だと気づきました」と目を輝かせていた。
劇団四季が2005年度から全国の小学校で展開する社会貢献活動。団員が普段の練習の基礎とする、母音を意識した発声「母音法」を通じ、子どもたちに美しい話し方を伝える。
子どもたちは初めに日本語の1音1音には子音と母音があることを学んだ。俳優の荒木勝さんから「母音をきちんと発音するのが大事。ミュージカルでも、セリフが聞きやすいと言われる秘けつが母音にあります」と説明を受けた後、「おはようございます」や「明日は雨だけど、学校へ行ってみよう」などの会話を母音だけで話す練習をした。母音が続く連母音や、子音が重なる連子音も大切にして話すことを教わった。
後半は応用として岩谷時子作詞の『友だちはいいもんだ』を全員で歌った。荒木さんは「歌も母音を意識してはっきりと。歌詞に込められた思いを理解して、相手に語りかけるように歌いましょう」。最後は輪になり、互いの顔を見ながら合唱。心のこもった大きな歌声が教室中に響いた。 2組の池田彩乃さんと石井羽音(はおと)さんは「母音だけで話すのが難しかった。俳優はたくさん練習していて素晴らしいと思った。習ったことを生かしてハキハキ話せるようになりたい」と笑顔を見せていた。
野崎西小 琴や尺八の演奏体験
日本の伝統楽器を体験する出前授業が5日、野崎西小学校で開かれ、5年生と特別支援学級の児童約60人がその魅力にふれた。
講師は、箏や尺八などのアマチュア演奏家10人でつくる「プロジェクト和の音」。和楽器の魅力を伝えようと今年、流派を越えたメンバーで結成し、同市の「わかやまの底力・市民提案実施事業」として小学校で教室を開いている。
まず、箏と尺八の二重奏『春の海』を鑑賞。子どもたちはその上品な調べに聴き入った。次に2グループに分かれて体験。箏はツメの付け方や弦のはじき方を、尺八は吹き方を教わった。尺八は息を吹き込んでもなかなか音が出ず、顔を真っ赤にしながら何度も挑戦した。
大﨑妃莉(ひなり)さんは「尺八は難しかったけど、箏は思ったより簡単でした。きれいな音が出せてうれしかった」。田中咲良さんは「ピアノとは違った音色が良かった。尺八は次に吹く機会があれば音だけでも出せるようになりたい」とにっこり。辻中宏誠(ひろのぶ)校長は「和楽器を演奏する機会は貴重で、印象深い経験になった。初めての楽器ばかりで、音の出し方など友達と相談しながら楽しめました」と喜んでいた。
和の音の川端敏行代表は「将来、海外で日本文化を紹介する時に今日の経験が生きるはず。中学、高校でも和楽器に親しんでほしい」と願っている。
(2016年12月10日号掲載)