昨年は観光客数が過去最高を数え、今年も真田丸ブームやインバウンドと、和歌山を訪れる観光客数は堅調です。その反面、進む高齢化に人口減、そして南海トラフ地震への備えと次の時代に向けた施策が求められています。和歌山県では来年度の新政策と予算編成の方針として「〝元気な和歌山〟の実現に向けて」を掲げています。和歌山の〝元気〟をいかに生んでいくか。仁坂吉伸県知事に、髙垣善信ニュース和歌山主筆が聞きました。
歴史・文化、サイクリング道整備
観光の新たな魅力発信
髙垣主筆(以下、髙垣) 道路網の充実や県のPRが功を奏して和歌山を訪れる人は増えています。しかし、各地域への経済効果という点では、もうひとつふたつ仕掛けがいるとの声も聞こえてきます。県として、観光に関する次の元気についてどうお考えですか。
仁坂県知事(以下、仁坂) これからは、県内での長期滞在や、主要な観光地から各地へ周遊していただく取り組みに力を入れます。既に「水」をテーマに、世界遺産ブランドと組み合わせたキャンペーンを実施しています。来年は、神話の時代から現代に至る「歴史・文化」をテーマにした100の旅モデルの発信や、サイクリストに魅力的な環境を整え、「サイクリング王国、わかやま。」を打ち出していきます。
生涯スポーツの機運高める
髙垣 今年はリオ五輪で、和歌山出身の田中佑典選手のメダル獲得など県民は大きな元気をもらいました。また、昨年は、紀の国わかやま国体・大会が開催され、県民のスポーツに対する関心が高まっています。今後、県はスポーツを県民の夢、元気、そして健康にどういった形で生かしていかれるのでしょうか。
仁坂 マスターズ世代を対象とした「国際・全日本マスターズ陸上」が来年に、平成31年は「ねんりんピック」、平成33年には「関西ワールドマスターズゲームズ」といった大規模な大会が、県内で隔年に開催されます。これらの大会を通じて、生涯スポーツに対する機運を盛り上げます。県民誰もが、スポーツを楽しみ、元気で活力ある生活ができる、そんな社会の実現につなげたいですね。
移住者呼び込みに受け入れ体制充実
髙垣 和歌山の元気を保つため、和歌山へのIターン、Uターン促進について、和歌山県は他の自治体より先んじてスタートしました。しかし、今や大半の地方が取り組むようになり、「人の流れ」を創造するその方法に個性が求められています。今後どのような展開を図られますか。
仁坂 U・Iターン者の受入れについては、「和歌山方式」による受け入れ体制、すなわち移住に関するあらゆる相談を一手に引き受けるワンストップパーソン(市町村職員)と、地域住民で構成する移住者受入協議会が連携した支援を行ってきました。昨年度からは「移住・定住大作戦」と銘打ち、移住支援をさらに強化しています。移住相談対応を行う「わかやま定住サポートセンター」の開設や、40歳未満の若年移住者に最大250万円を支給する「若年移住者暮らし奨励金」の創設、県統一版の空き家バンクによる空き家情報の提供で、「しごと」「くらし」「住まい」の3つの側面から、本県へ移住者をしっかり呼び込んでいきます。
まちなかに賑わい3大学設置 平成30年以降開学予定
髙垣 和歌山市に3つの大学が設置されるという話があります。大学設置の構想は、まちなかに元気を生みます。三大学設置のスケジュールと知事の期待をお聞かせください。
仁坂 和歌山県は、高校卒業後の県外進学率が全国で最も高い状態が続いています。そのような中、県と和歌山市がともに大学の設置・誘致を進めてきました。東京医療保健大学和歌山看護学部(仮称)は平成30年4月、県立医大薬学部が平成33年4月の開学予定で、和歌山信愛女学院は平成32年4月までの開学を目指しています。これら三大学の設置により県内進学の選択肢が増え、都市部の大学への流出抑制や県外からの流入により新しい人の流れができます。また、いずれも和歌山市のまちなかで開設を計画しており、多くの学生等が集うことになります。若者が増え、まちの賑わいにつながるものと期待しています。
健康寿命伸ばす多彩な取り組み
髙垣 元気に健康は欠かせません。和歌山県では「健康わかやま県民運動」を展開されています。この運動の背景と、内容、目標をお教えください。
仁坂 和歌山県は、がん・心疾患といった生活習慣病の死亡率が高く、その予防が課題です。運動習慣の定着や食生活の改善など、主体的な健康づくりを推進するため、各地域で「健康推進員」の養成をはじめ、健康づくりの輪を広げる取り組みを行っています。また、健康意識を高める住民参加型イベント「わかやま健康と食のフェスタ」を、今年からスタートしました。今後も、楽しみながら健康増進を図る仕組みをつくり、健康寿命を延ばしたいと思います。
巨大地震想定した復旧・復興計画
髙垣 これは元気に関係ありませんが、欠かせない話題を最後に。熊本大地震で防災・減災対策がいかに大切か認識される事例が相次ぎました。様々な施策に、すでに着手しておられますが、いま力を入れていること、また、県民に呼びかけたいことをお願いします。
仁坂 南海トラフの巨大地震が発生した場合、紀伊半島全体が直下型地震に匹敵する揺れになると言われています。そのため、津波も怖いのですが、その前に地震によって命が奪われないようにすることが大切です。県ではこれまで住宅などの耐震化について、全国トップクラスの補助制度を用意してきました。県民の皆様には、日頃から地震への備えとして、住宅の耐震化や家具固定などをお願いします。また、災害発生後、人命救助が終わったら、次は早期復旧・復興だと思っています。被災後の迅速な復興により、住み慣れた「まち」が、災害前よりもっと良い「まち」になるよう、復旧・復興計画の事前策定を市町村とともに進めていきます。
髙垣 最後に来年に向けての抱負をお聞かせください。
仁坂 来年には新しい「和歌山県長期総合計画」が出来上がります。そのはじまりの年として、明るい展望を持って力強い第一歩を踏み出したい。未来への投資がゆるぎないものとなるよう、明日が今よりいい日になるよう、さらに発展・上昇する元気な和歌山の実現に向けて、引き続き気合いを入れて頑張ります。
髙垣 ありがとうございました。
(ニュース和歌山2016年12月24日号掲載)