和歌山市出身の博物学者、南方熊楠が生まれて今年で150年。神奈川県の劇団民藝は東京での公演「熊楠の家」を6月に控え、団員や演出家ら7人が3月6〜8日、和歌山県内の熊楠ゆかりの地を訪れた。
女優の奈良岡朋子さんが代表を務める同劇団。「熊楠の家」は1995年に初演し、好評を博した。今年、22年ぶりに再演する。
7日には熊楠の父、弥兵衛が創業した和歌山市湊紺屋町の酒造会社、世界一統を訪問した。熊楠の弟、常楠の孫で、同社監査役の南方信雄さんから、熊楠の生まれは田辺市でなく和歌山市であることや酒にまつわるエピソードを聞き、「南方」「熊楠」などの日本酒を造る酒蔵を見学した。
熊楠を演じる千葉茂則さんは「和歌山は劇団の仕事で何度か来ていますが、生誕地に銅像があるのは初めて知りました。舞台では学者面した偉そうな感じではなく、市井にいそうな人間的な面を出したい」。演出家の丹野郁弓さんは「今回の公演のタイトル『熊楠の家』の通り、生活やプライベートの部分に迫りたい。社会性を持たせつつ、熊楠の内面にせまれれば面白い」と話していた。
一行は滞在中、『闘う南方熊楠「エコロジー」の先駆者』を著書に持つ武内善信さんに話を聞いたほか、田辺市の南方熊楠顕彰館を回った。「熊楠の家」は6月15日(木)〜26日(月)、渋谷の紀伊國屋サザンシアターで。来年以降、全国で披露する考えで、和歌山演劇鑑賞会は来年の観劇会での上演を検討している。
写真=南方さん(右)の案内で酒蔵を見学する民藝の俳優ら
(ニュース和歌山より。2017年3月11日更新)