寝ている間、大地震に見舞われたら──。昨年4月の熊本地震では、夜間に震度7の地震が起きた。暗闇の中、救助は困難を極め、避難路は倒木などに閉ざされた。夜間に起きる災害にどう対応するか、和歌山県警と和歌山市口須佐地区の取り組みを見た。

 

県警 熊本地震を教訓に

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 熊本地震で27人の援助隊員を派遣した和歌山県警は、初めの大きな揺れがあった4月14日の翌15日夕方に現地入り。明けた16日午前1時に突き上げるような本震に見舞われた。隊を率いた警備課の芝﨑展也さんは「余震が続く中、ライフラインは止まり、光がないと隊員の安全確認もままならなかった。照明を運び込めない救助現場もあった」と振り返る。必要な資機材や暗闇での特別な注意点など、夜間訓練の必要性を痛感した。

 この教訓を生かし、和歌山県警は11月24日、初めての夜間救助訓練を実施。バイクで悪路を走って路面状況を確かめ、倒木を切って車を走れるように道路を整備した。倒壊家屋の中にいる被災者を赤外線カメラで確認し、中からの救出と投光器などの設置訓練を行った。

 同課の増田雅美さんは「災害はいつ起きるか分からず、被災者の命を左右する72時間という限られた時間の中で、いかに迅速に対応できるかにかかっている。効率の良い光の当て方や隊員間の声かけなど、訓練を続けていざという時に備えたい」と意気込んでいる。

写真=昨年4月、未明に益城町で行った倒壊家屋の捜索

 

口須佐自治区 訓練は日没後

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 自治会単位でも夜間の災害に備える動きが出てきた。和歌山市の口須佐自治会ほかは今年2月18日、初の夜間避難訓練を実施。同地区は、防災をテーマにした祭りの開催や防災マップ作成と力を入れており、今回、犠牲者が多く出やすい夜間に避難を体験しようと企画した。

 参加した住民約90人は午後7時、班ごとに集まり点呼をとり、防災マップを手に避難所へ。マップが示す最短ルートは土砂崩れで使えない想定で、話し合いながら別ルートを歩いた。到着後は、段ボールの間仕切りを立て、非常食を試食した。

 中筋美晶自治会長は「災害時は街灯も消えて地震で起きた道路の段差や土砂崩れなど周囲の状況が分からなくなる。スムーズに避難できないことを想定した訓練は有効だった」。同地区防災アドバイザーの中筋章夫さんは「東日本大震災直後に訪れた被災地の夜は真っ暗で恐怖を感じた。今回、暗闇での避難は通常の数倍時間がかかり、避難所でも水や電気がない過酷な条件が待っていることを理解する機会になった」と成果を強調していた。

(ニュース和歌山より。2017年3月11日更新)