子どもの自主性を重んじるシュタイナー教育を実践する県内初の小学生向けスクール「和歌山シュタイナー学校」が4月9日(日)、紀の川市西三谷に開校する。同地の古民家で自主保育スペース「ほしの子」を運営する一般社団法人モモの会が開設。全日制の学校と同等のカリキュラムを設け、1年生5人が入学予定だが、法令に基づかない無認可校で、塾と同じ位置づけのため各市教委は対応に苦慮している。モモの会の西京子代表は「自分の経験や感じたことに基づいて社会とかかわれる子を育てたい」と描く。

 シュタイナー教育は、オーストリアの思想家、ルドルフ・シュタイナー(1861〜1925)の教育思想が元。様々な教科に芸術活動を取り入れ、特定の科目を短期間に集中するなど特有のスタイルで、子どもの感性と意志を重視し、ドイツ語圏では公教育に取り入れている国もある。日本では、シュタイナー学校が10校あり、約900人の小中高生が通う。いずれもNPOなどが無認可校として立ち上げ、実績を積み重ねた北海道と神奈川の学校は学校法人として認められている。

 モモの会は、シュタイナー教育に共鳴する元高校教諭の西代表が1999年に立ち上げ、親子教室を定期的に開催。3年前に保護者と共に「ほしの子」を開き、自然素材で作った道具での創作遊びや保護者を交えたイベントを開いてきた。この卒園児の保護者ら約10人が、子どもを学校任せにせず、育つ環境を共に創造したいと強く願い、スクールの開設を決意。机やイス、黒板を手作りして準備を進めてきた。

 初年度は1年生のみでスタート。5人が入学を希望しており、毎年1学年ずつ増やしていく。定員は1学年10〜15人で、8年後には小1〜中3の約100人を目指す。1クラスのみの今年は、教員免許を持ち、他府県のシュタイナー学校での授業経験がある石田寿文さんが担任を務め、月〜金曜の1〜4時間目に授業を行う。

 国語では、演劇や言葉遊び、読み聞かせなどを多く取り入れ、様々な角度から言葉について教える。体育は、日本舞踊で日本人らしい所作や体の使い方、伝統文化や芸術にもふれる。「学習指導要領を意識しつつ、座学だけでなく体験的に知識を身につける授業。自ら考え、表現し、答えを導き出すことを大事にします」と石田さん。

 娘を入学させる岩出市の東郷桃子さんは「児童数が少なく、多様性にふれるという点で不安は感じます。しかし、今は自己肯定感や物事を切り開いていく力といった点数にはできない力を伸ばしてくれる教育を選びたい」と期待をこめる。

 

教育委員会は対応に苦慮

 

 教育委員会としては複雑だ。学校教育法で、保護者は子どもに就学させる義務がある。入学希望者が暮らす市教委は、紀の川市、岩出市が「公的に認められた地域の学校に通ってもらうのが第一だが、教育委員会が強制的に公立学校へ通わせることもできない。籍を地元校に置いてもらい、定期的に訪問し、子どもの教育状況を確認する」。和歌山市は「例外を認めてしまうと今後に影響が出る。健康診断など授業以外の部分も含めて把握し、対応を考えたい」と慎重な姿勢をみせる。

 教育学を研究する和歌山大学の舩越勝教授は「子どもたちは一人ひとり違った存在であり、それに応じて学校や教育も多様なものである必要がある。海外では同様の学校が多く、今回の取り組みが和歌山や日本の教育に風穴をあけることにつながれば」と見ている。

 

写真=教室の内装を手作業で作り込む保護者ら

 

(ニュース和歌山より。2017年3月25日更新)