53歳で声帯を摘出し、現在は電動式人工喉頭(こうとう)で話す和歌山市の畑中孝之さん(72)が7月13日、紀の川市東大井の打田中学校でたばこの危険性について語った。「このような機具を使わなくて済むには最初の1本に手を出さないこと。自分の命や身体を大切にしてほしい」と訴えた。
「身体に良くないと分かっていてもやめられない。中毒の恐ろしさです」。受講した2年生130人を前に、畑中さんは20年近く、1日50本以上吸い続けた経験を振り返った。声帯摘出後の苦労も語り、「友達にたばこをすすめられても断るように。本当の友達は身体を悪くするものをすすめてくるはずがない。そういった友達を止めてあげられる人になってほしい」と呼びかけた。
新宮市出身の畑中さんは中学卒業後、大阪で就職し、16歳でたばこを吸い始めた。以降、ヘビースモーカーになり、のどの異変に気付いたのが53歳の時。喉頭がんが見つかり、初期だったが声帯を摘出した。「まさか自分がなるとは思いませんでした」。たばこの恐ろしさを伝えようと、2003年から小中高校や地域の勉強会で年間約40回、自らの経験を語る。
この日は、県那賀医師会の上田晃子さんから、日本の全人口に対する喫煙者の割合(19・3%)や、年間16万人がたばこを原因とする病気で命を落としていることの解説も受けた。石井統麻さんは「機械で出す声を初めて聞いて驚いた。一時の満足のために、寿命を縮めるのはもったいないと思った。喫煙者の父にきょうの話を伝えたい」、安達真里奈さんは「声を出せる機械を見て、困っている人に便利だと思いました。たばこをすすめられても断る」と話していた。
写真=畑中さん(左)が当てる人工喉頭を体験した
(ニュース和歌山/2017年7月22日更新)