文学、芸術分野で実績をあげた人を表彰する大桑文化奨励賞。古楽器の変遷を演奏で解き明かす和歌山大学教育学部の山名敏之教授(53)と、漆芸作家で文化財修復に力を入れる和歌山市出身の島本恵未(めぐみ)さん(29)が選ばれた。

 

古楽器研究の山名さん

 山名教授は18世紀の作曲家ハイドンを例に、鍵盤楽器のクラヴィコード、チェンバロ、フォルテピアノでの演奏を前提に曲が作られたことに着目した。現代のピアノとは音の出し方や響きが異なるが、今はピアノで演奏されることが大半。「『音をなめらかにつなげる』といった音楽記号に込められた意図は、当時の楽器を弾くことで初めて分かります」

 曲が作られた時代に応じ、県内外の演奏会で3楽器を弾き分け、作曲者の思いを再現することに情熱を傾ける。

 

芸作家の島本さん

 一方、島本さんは蒔絵(まきえ)が専門。飾り箱や茶道具、壁飾りなど漆作品全般に取り組む。中でも、実用品に潜む美しさを追求する。2013年に県展で最優秀賞に輝き、14年に京都で漆芸工房の表望堂を立ち上げた。

 展覧会は京都や大阪、東京が多い。また、漆技術を生かし、南禅寺や知恩院など文化財の修繕に当たり、昨年は加太の称念寺にあるらんまの金箔を補修した。「作家活動と文化財修復を通し、漆技術を次世代につなげたい」と願う。

(ニュース和歌山/2017年10月25日更新)