日本の原風景を求め旅を続ける紀の川市貴志川町西山の西川寬巳さん(88)が旅の記録を紀行書『日本の旅 こんな旅』にまとめ、4月に出版した。1991年に最初の著作を出してから10冊目。2013年末から3年間に訪れた94ヵ所をまとめた。過疎化が進む一方で田畑の開発が繰り返される中、「日本が日本でなくなろうとしている。各地に残る昔のままの姿を記録することで、日本の良さを守り伝えたい」と思いを募らせる。
原風景を追い求めて
「日本の原風景」「伝統を訪ねる」「歴史を追う」「鉄道好きが高じて」の4章構成。原風景の章では、雨と谷の流れがつくり上げた高知の中津渓谷、水仙が咲き乱れる岡山の六島、「うっぷるい」と読む島根の十六島と、38ヵ所を紹介する。また、歴史を追う章では、大阪に残る甚兵衛渡船場を取り上げた。
会社員時代から1人旅を繰り返し、日本人として郷愁をおぼえる場を探しては鉄道で全国各地を訪れてきた。原風景を求める旅の訪問地は、1000ヵ所を超えた。加齢と共に近畿が多くなり、今回紹介したうち、遠方は宮城や新潟、岡山、高知など。気持ちは衰えず、「日本で最も美しい村」連合の1つ、島根県の海士(あま)町をはじめ、行きたい場所はまだまだある。
文章に自らの思いを散りばめる。「旅は思想。1次産業こそが日本の美しい風景、地域社会、人間関係を守るとの視点を大切にしています」と力強く語る。
B6判、395㌻。1000円。宮脇書店和歌山店・ロイネット店ほかで販売。西川さん(0736・64・4109)。
(ニュース和歌山/2017年6月10日更新)